HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年09月17日(火) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『ねずみ女房』

仲間のねずみたちと一見同じでありながら、 どこか根本的にちがっているねずみの奥さんが主人公。 毎日、他のねずみと同じように暮らしているのに、 彼女の内側には秘密があるのだ。

囚われの鳩にすら、とどかない高さに、 この小さなねずみの魂は、飛翔できた。

たとえ見てしまっても到底わからない世界、 普通では見ることも知ることもできない世界を、 ふと、かすかに感じとる感性。

そういうものをもって生きるということは、 幸せでもあり、厄介のタネでもあり。 ゴッデンも、その、時に重くなったり羽根が生えたりする 荷物を背負っていたのだろう。

ねずみを通して人間を描いたゴッデンの寓話は、 そこはかとなく胸にしみてゆく。 ちいさなネズミでなくても、 人の子であってすらも、星は遠く、理解を超えたもの。 私たちに世界のなにがわかっているだろう。 毎日、食べて眠ることだけでも大変なのに。 本を読む時間がじゅうぶんにあったとしても、 永遠をかいま見る瞬間が時折にあったとしても、 その、属する世界に私たちは暮らすのだ。

淡々と語られる物語の終わりに、 やっと現れる永遠の輪。 今そこにあるもの、与えられたものの大切さを、 人よりすぐれた感受性よりも愛おしむ よろこびが、満たされない思いを埋めてゆく。 (マーズ)


『ねずみ女房』 著者:ルーマー・ゴッデン / 絵:W・P・デュボア / 訳:石井桃子 / 出版社:福音館

2001年09月17日(月) 『イラストレイテッド・ファンタジー・ブック・ガイド』
2000年09月17日(日) 『警告』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.