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■■■ (ちょっと)怖かった話
■■■ 2004年08月23日(月)
当直明けです。
昨夜は、さほど多くの急患さんが訪れる事も無く比較的平和な夜だったので、仮眠を取る時間もあったのですが。
暇に任せて、知り合いと話ししてたんですよ。
今になって思えば、やりかけの仕事もあつたのでそっちに精を出してれば良かったのですがね。
なにせ「こんな話」をしてくれちゃったワケですから。
本当か嘘かは知りませんが。
もしかしたら、どこかで聞いた話の受け売りかもしれませんし。
この話を既に知っている人もいるかも知れません。
(俺は初めて聞いた話なんですけどね)
では。。。
■見覚えのある顔■
(以前勤めていた職場の同僚の話)
彼女の住まいはマンションの3階だった。
比較的新しい建物ではあるが、その周辺は人通りの少ない静かな環境だった。
夜の9時過ぎに重たい体を引きずるように帰宅した彼女は、マンションの階段の踊り場で、駆け足で降りてくる見知らぬ男と危うくぶつかりそうになった。
正確には間一髪でよけた彼女と男の右肩が触れ、その勢いで後方に大きくよろめいたのだが。
文句を言うまもなく走り去っていく男。
自分の右腕にベトリと付着した血痕。
ゾッとした。
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翌日、遅い朝食を摂っていた彼女の家の呼鈴が鳴った。
ピーンポーン ピーンポーン
ピーンポーン ピーンポーン
昨日の夜の恐ろしい記憶がまだ鮮明な彼女は出るのを躊躇ったのだが、静かに玄関まで出て行きレンズから外を眺めてみた。
制服警官である。
また、昨夜の記憶が蘇ってきた。
小さくドアを開ける彼女。
もちろんチェーンはかけたままだ。
小さな隙間から挨拶する制服警官。
どうやら昨夜、上階で不幸な事件があったらしい。
やっぱり、そうだったんだ。
彼女は、昨夜あまりの恐ろしさで警察に通報しなかった罪悪感から「今初めて聞くような態度」を取ってしまった。
ここで昨日の夜の出来事を話したら、根掘り葉掘り聞かれてしまうに違いない。
場合によっては、最寄の交番か警察署まで同行する事になってしまうかもしれない。
嫌だった。
自分が知っている事は、中肉中背の男性という事で顔など見ているわけではない。
そして、少なくとも右半身に血液が付着したまま走り去る後姿くらいのものだ。
そんな姿で逃走しているからには、他の誰かも目撃しているに違いない。
そう思った彼女は、小さく開けたドア越しに制服警官に「何も知らない」事を告げ頭を下げた。
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彼女が事件の詳細を知ったのは、それから2日後のニュースだった。
この妙な時間差も気になったが、「あの日」の出来事を早く忘れる事が彼女には一番大事な事だった。
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何日経っただろう。
何気なく眺めていたTVで、「あの事件」の犯人が逮捕されたと報じていた。
彼女は少しホッとした。
なにせ自分は「あの男」とすれ違っているのだから。
本当に安心した。
犯人の顔を見るまでは。
ブラウン管に写る犯人の顔は、あの時と同じ無表情なままの。
あの制服警官だった。
彼女は震えが止まらなかった。
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