アニメ『ムーミン』が始まったのは、ぼくが小学4年生の頃だった。 たしか日曜日の夜7時半から、フジ系でやっていたと思う。 『アルプスの少女ハイジ』や『フランダースの犬』などと同じ時間帯である。
いや、別に見ていたわけではない。 どちらかというと、ぼくはああいうアニメは好きではなかった。 なぜなら、ああいうアニメは女子が見るものと思っていたからだ。
では、男子は何を見ていたかというと、やはりあの頃は、ウルトラマンに代表される特撮ものだとか、宇宙系やギャグ系のアニメが中心だった。 というわけで、ぼくもそういうものが好きな一人だった。
ところで、ぼくはあの頃、その時間帯は何を見ていたのだろう。 小学4年といえば、その頃まだ『パーマン』をやっていただろうか? 1月から『悟空の大冒険』が始まったのは覚えているが、それ以前の記憶は曖昧である。
そういえば、ちょっと前の牛乳のCM(今もやっているかもしれない)で、その『悟空の大冒険』のエンディングテーマが使われていた。 「悟空が好き、好き、好き…」を、「牛乳が好き、好き、好き…」と置き換えて歌っていたのだ。 ぼくたちの世代は、あれを聞いて「懐かしい」と思うだろうが、若い世代は、ほとんど知らないだろう。 ということは、彼らにとって「牛乳が好き…」がオリジナルになるのだろうが、ぼくはあの歌をけっこう気に入っているので、『牛乳の歌』などと言われたら嫌である。
さてムーミンのことだが、ぼくはあまり見たことがない。 いとこ(女子)が好きだったので、日曜日に親戚の家に遊びに行くと、必ずこれをかけていた。 当時は、テレビは一軒に一台の時代だったから、ムーミンにチャンネルを合わされると、他の番組を見ることが出来ない。 そこでぼくは、「早く帰ろう」と母にせがんだものだった。
しかし、腰の重い母は、なかなか帰ろうとしない。 そのため、ムーミンにつきあわなければなくなる。 面白くないぼくは、いつも「こんなカバの番組なんか見らんで、他のを見ようや」と文句を言っていた。 するといとこは、ムキになって「ムーミンはカバじゃない!」と、ムーミン一族を一から説明しだすのだった。
いとこの講釈はいつも「ムーミンはねえ、妖精なんよ…」で始まった。 「妖精の話に、何でタバコくわえた人が出てくるんね?」 「あれはスナフキンと言って、旅人なんよ」 「‥‥?」 いとこの講釈を聞いても、ぼくはムーミンのことを理解できなかった。 ただ、スナフキンが旅人だということは、よくわかった。 結局、その後もムーミンは見てないので、今もまだ理解できないままでいる。
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