| 2005年09月10日(土) |
スーパー・ウーマン(後) |
さて、翌日、ぼくがパソコンを打っていると、嫁ブーが「出かけてきます」と言う。 「どこ行くんか」 「例のとこ」 「例のとこ…?ああ、スーパーか」 「うん。ちょっと下見してくるね」 「ああ」 「夕方行く時は付いてきてね」 そう言って、嫁ブーは嬉しそうに出て行った。
1時間ほどして戻ってきた嫁ブーは、開口一番「お母さんの言ったとおりやった」と言った。 「何が?」 「やっぱり、あそこ高いよ」 「ああ、スーパーか」 「冷凍食品、4割引しかしてないんよ」 「えっ、オープンのに4割引か」 「うん」 「それは高いのう。オープンなら半額が普通やろ」 「そうなんよ」
そして夕方、約束通り、ぼくはそのスーパーに付いて行った。 嫁ブーは午前中文句を言っていたわりには、嬉しそうに目を輝かせて店内を回っていた。 一方ぼくはというと、まったく面白くない。 食料品しかないのでつまらないのだ。 デパートやイオンに行った時は、嫁ブーが食料品を漁っている間、ぼくは本屋やCDショップにいることが多い。 食料品を見ても、何も想像力が働かないからだ。
そうは言っても、いちおう新店なので、中に入ってみた。 ところが、相変わらず店舗は小さく、通路は狭い。 それゆえに身の置き場がない。 図体の大きな男が、商品を見るでもなく、ただ狭い店内をウロウロしているのだから、他のお客さんに迷惑がかかる。
そこでぼくは店を出て、入口付近で嫁ブーの買物が終わるのを待つことにした。 ところが、その嫁ブーの来るのが遅い。 何をやっているんだろうと、もう一度店の中に入って行くと、嫁ブーは電話をかけていた。 そばに寄っていくと、嫁ブーは「ええ、いまやってます」とか「そうですね。安くないですね」などと言っている。
電話を切った後、嫁ブーはニヤッとして、ぼくに「お母さんから」と言った。 「お母さん、今日もここに来たらしいよ」 「えっ、昨日四回も来たのに?」 「うん。今日はね、三回らしいよ」 「昨日、安くないとかさんざん文句言いよったくせに」 「気になって仕方ないんやろね」 「値段がか?」 「違うんよ。高いとか文句言ってたけど、お母さん、けっこう買っとるんよね。店が新しいけ、何か買いたくてたまらんみたいなんよ。今日は三回来て三回とも『両手にいっぱいお買物』やったらしいよ」 「じゃあ、昨日もそうやったんかのう」 「うん」 「そういえば、昨日実家に行った時、奥の部屋にオロナミンCが山積みしてあった」。 「ここで買ったんよ。オロナミンCは明日まで10本498円やけね」 「ということは、明日もオロナミンC買いにくるんかのう」 「いや、『明日は忙しいけ行かれん』とか言いよったよ」 「まさか、『今日、もう一度行く』とでも言ったんやないんか?」 「はい、そう言ってました」 「‥‥‥」
その翌日、実家に行くと、奥の部屋のオロナミンCの数は、しっかり倍になっていたのだった。
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