昨夜、寝る前に鏡を見てみると、目の下に隈ができていた。 そういえば、ここ数日午前3時以降に寝ることが多い。 普段なら、休みの日に埋め合わせをする。 つまり、寝だめをするのだ。 ところが最近、休みといえばいつも晴れている。 そのため、寝ていると何かもったいないような気がして、なかなか寝ることをしない。 かといって何をやっているわけでもない。 気がついたら夜が来ていて、「ああ、こんなことなら寝だめしておくんだった」と後悔する。 そのせいで疲れはどんどんたまっていく。 たまりたまった結果が、この隈になったのだろう。
とはいうものの、別に隈ができても気にはならない。 ぼくは身なりをかまわない人間なので、何かあっても「ま、生きてりゃいいや」と思ってしまい、すぐに関心は別のほうへと向かっていく。 しかし、客商売という仕事の性格上、この隈はいただけない。 不健康そうな顔をお客の前に晒すことは、タブなーなのである。 そこで、布団の中で「健康、健康」と呼びかけて寝ることにした。 それが効いたのかどうかはわからないが、朝起きてみると、目の下の隈は消えていた。
ぼくはこうやって、布団の中で暗示をかけながら寝ることが多い。 頭や腹が痛かった時などには、その痛い部分に「全快、全快」とか「完治、完治」などと呼びかけるのだ。 すると、朝起きた時には、ほとんどの痛みは消えている。 こうやって自分に呼びかけることを『自己暗示』と言うのだろうが、ぼくはそう呼ばない。 何と言うかというと、『自分を騙す』である。 どこかの国には「嘘も百回言えば本当になる」ということわざがあるらしいが、自分に対し「調子がいいんだ」と嘘を吹き込み続けることで、だんだん体は騙されてしまい、そのうち本当に調子が良くなってくるものである。
しかし、こういう技を発見したのも、病院に行きたくないがためである。 そのおかげで、そういう痛みで病院に行ったことはほとんどない。 しかし、歯痛には通用しなかった。 その証拠に、現在歯医者に通っている。
さて、『自分を騙す』という重宝な技を、自分の体のためだけに利用するのももったいない。 ということで以前、「この『自分を騙す』ことを他に応用できないものだろうか」と思い、実験をやったことがある。 東京にいた時だが、財政が底をつきかけたことがある。 その時に「自分は金持ちだ」とやってみたのだ。 しかし、金持ちになるどころか、わずかに残っていた持ち金もスリに盗られてしまったのだった。 こういう経験があるので、自分の体調以外のことで『自分を騙す』ことはしないようにしている。
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