頑張る40代!plus

2005年04月29日(金) 売出し初日(下)

【2】
うちの店は自動ドアから出入りするようになっている。
だが、売出しの開店前ともなると、けっこうお客さんが並ぶので、開いたり閉まったりする自動ドアに並ばせるのは危険である。
そこで、開店前には売場の手前にロープを張り、そこまでお客さんを入れ、開店まで待ってもらうことにしている。
ほとんどのお客さんは、そのロープの前で大人しく待ってくれている。
だが、中にはロープをくぐって店内に入る人もいる。
もちろん大人ではない。
そう、子供である。
子供にはそういう決まり事は通用しないのだ。
親がいるからだろうが、したい放題やってくれるのだ。
先に書いたように、ロープの下をくぐって店内に入る子もいれば、ロープを揺さぶって遊ぶ子もいる。
そういう子の親が何をしているのかと言えば、他のお客さんと話をしたり、チラシを目で追っていたりして、子供のやっていることにはほとんど無関心なのだ。
それでも、周りの目が気になるのか、時々「○ちゃん、やめなさい」と形だけの注意をしている。
しかし、子供は言うことを聞かない。

実は昨日、そのことでぼくは切れたのだった。
開店間際、ロープを外すために、ぼくはロープの張っているところに立っていた。
すると、子供がロープを揺さぶりだした。
最初は軽く揺さぶっていたが、だんだんエスカレートしてきた。
そのロープをとめていた簡易性の柱がグラグラしだしたのだ。
それまで知らん顔をしていた親は、それを見てようやく注意をした。
「○ちゃん、お店の人に叱られるからやめなさい」
子供はそれでも言うことを聞かない。
一度は離した手を再びロープにかけ揺さぶりだした。
そのせいで、ついにロープが外れたのだ。
「あーあ、○ちゃん。だから言ったでしょ。お店の人に叱られるよ!」

ぼくは別に子供を叱りたいとは思わない。
叱りたいのはその親のほうである。
口で言うだけで、ロープをつかんだままになっていたわが子の手を退けようとはしない。
ここでぼくの堪忍袋の緒が切れた。
「お店の人に叱られる?じゃあ、お言葉に甘えて叱ってあげましょう」ということで、子供に向かって大きな声で「こんなことをしたら他の人に迷惑がかかるやろ。手を離しなさい!」と言った。
子供はその声に一瞬ビクッとした。
しかし、ロープは握ったままだった。
そこでぼくは、「離しなさいと言いよるやろ!」と言って子供の手をつかみ、ロープから外した。

その間親は何をするでもなく、成り行きを見ているだけだった。
自分が叱られているような気がしたのか、わが子が叱られているのを見て忍びなかったのか、それともわが子を叱るぼくに怒りを覚えたのかは知らない。
そのあと親は、ぼくに対して謝るでもなく、文句を言うでもなかった。
何か言ってくれば、お店の人として叱ってやったのに残念である。


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