張飛「兄貴、この間成都の都であった民衆の暴動が、魏や呉の国でも起こっているらしいぜ」 関羽「うむ。先ほどそれをわが君の使いの者から聞いたところだ」 張飛「いったい何が原因なんだ?」 関羽「どうも、倭の国に対して民衆が怒っているらしいのだ」 張飛「倭?あの東夷の倭か?」 関羽「そうだ」 張飛「あそこは、卑弥呼とかいう婆さんが国を治めていたんだったなあ」 関羽「そうだ」 張飛「しかし、倭は魏とだけ、仲良くしていたんじゃなかったか?」 関羽「いや、どうもそうではないらしい。魏だけではなく、呉や我が蜀とも裏で取引があったらしいのだ」 張飛「我が国とも?」 関羽「そうだ」 張飛「いったい何の取引をしていたんだ?」 関羽「それはわからない」 張飛「丞相はそのことを知っているのか?」 関羽「さあ、どうだろう?今度都に行く予定があるので、その時ちょっと聞いてみるか」
後日。 関羽「丞相、お久しぶりです」 孔明「おお、羽将軍ではないですか。どうされましたか?」 関羽「最近、魏や呉の国でも、前に成都であったような暴動が起こっていると聞き、ちょっと丞相の意見を聞きたいと思いまして」 孔明「暴動ですか…、実に遺憾に感じております」 関羽「先ほど張飛とも話していたのですが、倭は魏と仲がいいと聞いております。なのにどうしてわが蜀の民衆までが暴動に至ったのでしょうか?」 孔明「これはあまり知られてないことなのですが、実は倭の文明というのは我々よりはるかに進んでいて、この中原のみならず、南蛮・東夷・西戎・北狄に至るまで、その恩恵を受けているのです」 関羽「ほう、それは初耳ですなあ。倭人というのは戦好きの野蛮人とばかり思っていた」 孔明「確かに戦をやっていた時期もあるのですが、それはもうずっと昔のこと。今はいたって平和な国になっており、工業に力を入れ、その技術は世界を凌駕しているのです。倭はその技術で稼いだ金を、この中原に貢ぎ物としていたわけです」 関羽「なるほど」 孔明「我々はそのおかげで武器を手にすることが出来、こうやって三国で覇権を争うことが出来るのです」 関羽「しかし、それは魏一国だけのことではないのですか?」 孔明「いやいや、彼らはちゃんとこの蜀にも貢ぎ物を持ってきているのです」 関羽「なぜそういうことをするのでしょうか?蜀と魏が敵対しているのは知っているだろうに」 孔明「そこが中原との宗教の違いなのでしょう。倭は蜀や魏や呉といった中原の国、さらに夷狄の国といえど、隔たりなく接しているのです。そこに優劣など一切つけない。不思議な国です」
関羽「しかし、それがどうして民衆の暴動へと繋がったのでしょうか?」 孔明「倭は今度、中原への貢ぎ物をやめると言ってきたのです。魏はそれを不服として、民衆に暴動を起こさせたわけです」 関羽「それは魏だけの話でしょう。どうして蜀の民衆までが暴動を起こすのですか?」 孔明「魏の暴動と、蜀や呉の暴動は、その性格が違っています」 関羽「性格が違う?」 孔明「そうです。魏がやっているのは倭への見せしめです。しかし、蜀や呉の暴動は策略なのです」 関羽「策略?誰がそんなことをしているのですか?」 孔明「仲達です」 関羽「仲達?」 孔明「そうです。司馬仲達です。今度曹操が雇い入れた切れ者です。彼は間者をこの蜀に送り込み、『倭人というのは実にとんでもない人種だ。中原を全部乗っとろうとしている。今度それを抗議して、魏で民衆が暴動をやることになっているらしい。こちらもやろう』と、蜀の民衆を扇動したのです。呉の場合もそうです。魏もやっていることだから、蜀や呉の要人は、民衆が自然発生的にやりだしたことだと思うでしょう。それが彼の狙いなのです。民衆がやっていることだから、あまり真剣に取り締まりもしない。その隙に乗じて、彼は軍を送り込もうとしたのです」 関羽「軍を?」 孔明「そうです。わたしはそれを見抜いていました。だから、忠達は軍を送れなかったのです。しかし、彼のことですから、二の手三の手を打ってくることでしょう。羽将軍も気を抜くことなく、国境警備に勤しんで下さい」 関羽「さすがは丞相。ご慧眼、感服仕りました。しかし、魏は人材があふれている。司馬仲達か」 孔明「近い将来、彼はきっとわたしの好敵手となることでしょう」
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