昨年の日記にも書いたが、昨年のバレインタインのお返しは、資生堂パーラーのチーズケーキだった。 その評判がよかったので、「今年も何か喜ばれるものを」といろいろとお返しを考えていたのだが、なかなかこれといったものが見つからない。 ケーキのおいしい店なら知っているが、ケーキだと日持ちがしない。 そこで、日持ちのするクッキーに絞り込むことにした。 ところが、そうなると、クッキーのおいしい店を探さなければならなくなる。 クッキーなど普段食べないので、どこのがおいしいかなんてまったくわからない。 そこで今年も嫁ブーを登場させた。 先週の休みに、デパートにつき合ってもらったのだ。 デパートは昨年と同じく、メイン入口と食品売場の二ヶ所に特設会場を作り、そこに若い子をはびこらせて中年面のおっさんたちの購入意欲を煽っていた。
一通り見て歩いたが、商品がたくさんありすぎて、どれを選んでいいのかわからない。 「いっぱいあるのう。どれ選んでいいかわからん」 「うん」 「いっそ、『ひよこサブレ』とか『チロリアン』とかにしようか」 「だめよ、お土産やないんやけ」 「変わらんやないか」 「全然違う」 「石村の『塩豆大福』は?」 「それもお土産」
ぼくはだんだんイライラしてきた。 「面倒やのう。やっぱり、今年も資生堂パーラーにしよう」 「だめよ。毎年同じじゃ飽きられるよ。最初に決めたとおりクッキーがいいっちゃ」 「クッキーと言ったってのう…。どこか有名なところあるんか?」 「あるよ」 そう言うと、嫁ブーはぼくをあるブースに連れて行った。
「これがおいしいんよ」 「y、o、k、u、m、o、k、u、ヨクモク?」 「違う、ヨックモック!」 「聞いたことないのう。ここ有名なんか?」 「うん」 「こういうのブルボンにもあったのう」 「全然味が違う。こっちのほうがずっと上品な味がするんよ」 「ふーん。じゃあこれにしよう。おまえ適当に見つくろって買っとけ」 そう言って、ぼくはお金を渡した。
しばらくして、精算を終えた嫁ブーが大きな袋を持ってきた。 買ったは、バレンタインデーにもらった人の分5個と、前に母からタバコをもらっていたのでそのお返し1個の計6個。 嫁ブーには、みな同じものを買えと言っていた。 ところが、袋の中を見ると一つだけ包みが大きいのだ。 「なんかこれは?」 「お義母さんの分」 「みんな同じのにしろ、と言うとったやろ」 「ふふ、いいやん」 なるほど、そういうことか。 母にあげた分を、自分も分けてもらおうという腹なのだ。 相変わらず、せこい女である。
さて、昨日13日、まず一人の人に、そのヨックモックのクッキーを手渡した。 するとその人はその包みを見て、「うゎー、ヨックモックやん」と言って歓喜の声を上げた。 その人はヨックモックのファンで、デパートに行くたびに、それを買っているらしい。 なるほど嫁ブーの言うとおりである。 ヨックモックは有名だった。 ということで、今日あげた人の反応が楽しみである。
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