家に帰ってから、ぼくはさっそく母に聞いてみた。 「Nさんち知っとう?」 「Nさん?ああ、前の会社におった人やろ。あの人再婚して、今Sという姓になっとるけど」 「その人、娘がおったやろ?」 「○江ちゃんやろ?」 「うん」 「Nさんと私、私仲良かったんよ。あんたもあったことあるよ、Nさんにも○江ちゃんにも。そうそう、あんたよく○江ちゃんと遊びよったやん」 「・・・・、知らん」 「そうよねえ。昔の話やけ。で、それがどうしたと?」 「Mさんのね」 「うん」 「嫁さんの名前、○江と言うんよ」 「ええっ?もしかして、あの○江ちゃん?」 「うん」 「そういえばあんた、Mさんの結婚の時、行ったんやったねえ。その時わからんかったと?」 「わかるわけないやん。顔も覚えてないし。新婦の母のところにNさんと書いてたわけでもないし。いや、仮にNとなっていたとしてもわからんかったやろうね」 「そんなもんかねえ」 そんなもんである。 それがもとで、母とNさんとの親交が再び始まった。
ぼくとしては、こうなることを予想して、Mさんとつき合っていたわけではない。 が、世間は狭いと言ったらいいのか、実に不思議な縁である。
【その2】 さらにこういう例もある。 この日記に何度か登場している、友人のオナカ君のことである。 彼とは高校時代に知り合った。 1年の時は隣のクラスだった。 まあ、顔見知り程度の存在だった。 2年の時に同じクラスになり、その頃から現在まで、ずっと飲み友だちでいる。 まあ、彼とはそういう縁だったのだろう。
ところが、縁はそれだけではなかった。 オナカ君は、仲間内では誰よりも早く結婚した。 奥さんは、ぼくたちと同じ高校出身で2級下である。 だが、オナカ君と奥さんは、高校時代に知り合ったのではない。 仕事上で知り合ったのだという。 オナカ君は奥さんの実家のそばに新居を構えた。 その奥さんの実家というのが、うちの嫁ブーの実家の近くである。
ある日、ぼくが嫁ブーの実家に行っていると、なぜかそこでオナカ妻の実家の話題が出た。 近くとは言っても、けっこう距離が離れている。 「何の話だろう?」と聞き耳を立てていたのだが、そこで意外な事実を知った。 何と、嫁ブーの父親とオナカ妻の母親が親戚関係にあるというのだ。 であれば、当然オナカ妻と嫁ブーは、親戚同士ということになる。 ということは、オナカ君とぼくは、戸籍上親戚関係にあるということだ。 何と不思議な縁だろう。
ということで、ぼくとオナカ君は今、深い関係にある。
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