ひと頃、首が痛いだの、背中が痛いだの言って騒いでいたが、ここに来て、ようやく治ったようだ。 別に、整骨や針灸に通ったわけではない。 もちろん、外科医なんかにも行っていない。 では、自然に治ったのかというと、そうではない。 実は、首・背中が痛くなって以来、毎日欠かさずにやっていたことがある。 それは、寝るための準備運動である。
寝る準備運動というと、変に思われるかもしれないが、一日の中で、一番体を痛めやすいのは、寝ている時間である。 確かに、起きている時には怪我をすることもあるだろうが、それは注意すれば、ある程度は防ぐことが出来る。 仕事などで、ずっと同じ姿勢を取っていても、起きているから、何らかの矯正は出来るというものだ。 しかし、寝ている時は、そうはいかない。 変な姿勢を取っていたりしても、気づくことがないのだ。 その結果、腰が痛かったり、肩が重かったり、首を寝違えたりし、日常生活に支障を来すことになる。 寝るための準備運動というのは、そういうことを極力防ごうとするための運動である。
で、寝るための準備運動とはどういうことをするのか? 別に特別なことをやるのではない。 やるのは、ただのラジオ体操である。
ラジオ体操というと、簡単に思えるかもしれないが、毎日となると、話は違う。 簡単と思っていたラジオ体操が、急に難しくなるのだ。 体操そのものが難しくなるのではない。 継続してラジオ体操をやることが、難しくなるのである。 ぼくは、今まで何回も挫折している。 しかし、今回は頑張った。 そのおかげで、完治したのだ。
ラジオ体操と言えば、以前ぼくが体調を崩した時に、ある人から「いつも体調崩しとるみたいやね。何か運動しよる?」と聞かれたことがある。 その時、ぼくは「しよるよ」と答えた。 「どんな運動?」と聞くので、ぼくは真面目に「ラジオ体操」と答えた。 すると、その人は突然笑い出し、「ははは、ラジオ体操が運動か?ただの準備運動やないね」と言った。 「準備運動だって、立派な運動やん」 「そりゃそうやけど、‥‥ラジオ体操…、ハハハ…」 何が受けたのかは知らないが、その人の笑いは止まらなかった。
そのあと、その人は会う人会う人に、そのことを言って回ったようだ。 それを聞いた人たちが、ぼくのところにやってきて、「しんちゃん、あんた面白いねえ。ラジオ体操が運動なんね?」と、面白がって言った。
『じゃあ、聞こう。 あんたたちは運動だと思って、テニスとかバレーボールをやっているらしいけど、それは毎日やっているのか? どうせ、サークルなんかでやっている、お手軽なものだろう。 週1回か2回やってるだけじゃないか。 間が開くせいで、やった翌日は、肩が上がらんの腰が痛いの言っている。 ぼくに言わせれば、そんなもの運動でも何でもない。 闇雲に体を痛めつける、ただの競技じゃないか』 ぼくはその時、そう思ったものだった。
ラジオ体操を侮ってはいけない。 確かに5分そこらの体操かもしれないが、真剣にやると、しっかり汗をかくのだ。 『安心』や『爽快』などの健康雑誌があるが、そこにはきなこドリンクやアロエなどとならんで、時々ラジオ体操の効能も書いてある。 しかし、テニスをやって難病が治ったとか、バレーボールをやって長年苦しんできた腰痛から解放されたとかいう話は、一切載っていない。
そもそも、このラジオ体操は、健康増進を目的として作られた運動である。 だから、毎日やっていれば、嫌でも健康体になれるのだ。 時間もかからないし、どんな場所でも、どんな服装でも手軽に出来る。
今、午前2時である。 そろそろ、ラジオ体操の時間だ。
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