朝、駐車場でエンジンをかけていた時だった。 すぐ近くで「キーッ、ガシャ!!」という音が聞こえた。 車から降りて見に行くと、駐車場出口の前でワゴン車が軽自動車に追突していた。 そう大した事故ではなく、軽の後ろのバンパーが軽くへこんでいるくらいで、修理代10万円前後といったところだろう。 そのおかげで、駐車場の出口は塞がれてしまい、ぼくは車を動かすことが出来なくなった。 おまけに道は渋滞してしまった。 車の中で待っていてもしかたがないので、事故の成り行きを見ようと、ぼくは車を降りた。
ぼくが見に行った時には、すでにワゴン車を運転していた作業服の男が外に出ていた。 ところが、軽の運転手がなかなか出てこない。 ワゴン男が相手の損傷を確認している時、軽男は腰を屈め、足を引きずるようにして出てきた。 いかにも追突のショックでそうなったかのようである。 しかし、車の損傷から見ても、体に影響を与えるほどの事故ではない。
「どうなるものか」と二人の様子を見ていたが、名刺を渡したり、お互いの車を見ているばかりだった。 そうこうしているうちに警察がやってきた。 そのとたんに、軽男の腰がまっすぐに伸びたのだ。 そして警察の質問にハキハキと答えている。 いったいあの事故後の姿は何だったのだろう。
警察はとりあえず車を移動させた。 おかげで、前の道の渋滞は解消され、ようやくぼくも車を動かすことが出来た。 しかし、会社には10分遅刻してしまった。
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