あいかわらず小久保事件のことを考えている。 ぼくがなぜこの事件を気にするのかといえば、このことが引き金になって、主力選手が放出されるのを恐れるからである。
かつてこの福岡には、今や伝説となっている西鉄ライオンズというプロ野球チームがあった。 昭和30年代には、ダイエーの前身である南海や巨人と数々の名勝負を繰り返してきた。 そのチームが弱くなり、あげくに所沢移転という悪夢にまで発展したそもそもの原因が、昭和44年に起きた「黒い霧事件」である。 翌年、当時のエースであった池永を始め、与田や田中といった主力選手が球界を追放され、その責任を取って中西監督が球団を去った。
その後を受けて稲尾が監督を務めたが、主力選手を抜かれた痛手は大きく、加藤初や東尾といういい選手が育ったものの、チームはずっと低迷が続いた。 挙げ句の果てに球団は身売りとなった。 「太平洋クラブ」とか「クラウンライター」とかいう馴染みのない名前の企業が買い取ったものの長続きせず、昭和53年西武にすべてを持って行かれてしまった。 池永選手らの永久追放から西武身売りまで、わずか8年である。
ぼくたち九州人は、そういう悪夢のような経験をしてきている。 そのため、主力選手がいなくなると、プロ野球チームがなくなるのではないかという不安に怯えてしまうのだ。 先日地元の福岡銀行が、ダイエーの福岡事業支援を前向き検討すると表明したが、その条件の一番目に「球団が福岡に存続し続ける」をあげた。 もちろんプロ球団があるとないでは、経済効果がまったく違ってくるから、福銀は球団存続を条件に出したのだろうが、そこには「ああいう辛い思いを二度としたくない」という気持ちが少しは働いているのだと思う。
ぼくのような無力なファンは、ホークスのために何もやってあげることが出来ない。 せめて、福岡銀行に「頑張ってくれ」と祈るだけである。 あの悪夢を再び繰り返さないためにも…。
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