今日が改装初日となったのだが、ぼく以外は初めての作業のせいか、気が張っているし、テンションも高い。 いよいよ始まったな、という感じがする。 ところがぼくは、相変わらずのマイペースだ。 2月末からずっとこのペースで来ているので、どうも周りの雰囲気になじめない。 それに、生まれつき一匹狼的な性格のせいか、他の人と仕事をするというのが、ぼくは苦手なのだ。 ちゃんといついつまでにこの仕事をやり終えるから、作業は一人でけっこう、自分のペースでやらせてくれ、というのが本音である。
たくさんの人の力を借りて、あるいはその道の専門家の力を借りてやると、たしかに時間も早くすむだろう。 その余った時間で、他の仕事も出来るだろう。 しかしぼくはだめなのだ。 たくさんの人が応援に来ると、その現場の主であるぼくが「ああしろ、こうしろ」と指図をしなければならない。 人の尻をたたく、ぼくはこれが嫌いである。
応援者の中には『仕切りたがり屋』という人もいて、やたら声を張り上げ、ピント外れな指示を出している。 そういう人はえてして頭が回らないものである。 これといった考えもなく、思いつきでその場限りの指示ばかり出すものだから、だんだんつじつまが合わなくなってくる。 「これはどうするんですか?」 「次は何をしたらいいんですか?」 などという質問に答えられなくなり、いつの間にかその場からいなくなっている。 こういう人がいると疲れる。 「よけいなことを言わんでいいから、あんたは一人で出来る仕事をやってくれ」とつい思ってしまう。
ところで、今日は職人技というものを見せてもらった。 什器専門の職人さんで、とにかく仕事が早い。 昨年の夏、初めてぼくが什器をばらした時、2時間かかった。 その後、何度か什器をばらす機会があったのだが、試行錯誤しているうちに要領を得、今回の改装準備では1台5分ほどでばらせるようになった。 素人ならこの早さで充分である。 しかし、上には上がいる。 その職人さんは、何と1台を1分足らずで什器をばらしてしまうのだ。 ぼくが1台ばらしている間に、5台の什器をばらし終えていた。 ばらしただけではない。 後日、再び組み立てやすいようにと、部材のメンテまでやっているのだ。 さすがその道で飯を食っている人だ、と感動しきりだった。
こういう時にいつも思うことだが、お偉いさんというのはいったい何をしに来るのだろう。 いかにも視察するといった趣で、店内をうろうろしている。 せっかく来たのだからと言って、廃材一つ運ぶわけでもない。 「○○君。頑張ってよ」などと激励するのはいいが、そのために激励された人の手が止まり、せっかくつかんだ仕事のペースが狂ってしまう。 その結果、作業が遅れてしまう。 こういう理屈がまったくわかっていない。
とにかく、今日から改装工事が始まった。
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