最近ハマっているお菓子がある。 別に特別なお菓子ではない。 キャラメルである。 それも、北海道のミルクキャラメルとか鹿児島のサツマイモキャラメルなどといった、凝ったものではない。 ごく普通の、どこにでも売っている、森永のミルクキャラメル、グリコ、明治のクリームキャラメルなど、昔から口になじんだものばかりだ。
ある女子社員から、森永のミルクキャラメルをもらったことがきっかけだった。 その人は、アルバイトのおじさんからもらったと言っていた。 何日間か封を開けずにそのまま机の上に置いてあったのをぼくが見つけて、「お前、これ食わんのなら一つくれ」と言った。 「いいよ、どうせ食べんけ」 ということで、毎日一粒ずつもらっていたのが、そのうち病みつきになってしまった。 「今度は、明治のクリームキャラメル食べたいんやけど」 「自分で買ってくればいいやん」 そういうわけで、今日仕事中に近くのスーパーに行って、その明治のクリームキャラメルを買ってきた。
昔からキャラメルが好きだったが、中学からこちらキャラメルを食べることを敬遠していた。 理由は、銀歯が取れるから、である。 キャラメルやガムをかんでいて、ガリッという感触がした時は最悪である。 それまでの至福の世界から、一気に地獄に突き落とされる気がする。 この感触が嫌だから、これまでキャラメルを避けていた。 また、キャラメルカスが歯にへばりつく感触も、あまり気持ちいいものではない。
ここ10年ばかり歯医者に行ってないので、銀歯は昔よりも外れやすくなっているだろう。 それなのに、なぜぼくはキャラメルにハマってしまったのだろう。 おそらくその答は、疲れているから、だろう。 前に少し話したことがあるが、今月末、店がリニューアルすることになった。 改装のメインはぼくが担当する売場で、業者が「閉店と同時に売場を空にしてくれ」と言ってきた。 そのため、3月に入ってから毎日肉体労働をしている。 疲れる。 きっとその疲れのせいで、体が甘いものを欲しがるようになったのだろう。
甘いもの? それなら飴でもいいじゃないか。 確かに飴も食べているが、ぼくが食べている飴は、ほとんどがのど飴である。 飴を食べた後に、歯を磨いたような爽やかさが口いっぱいに広がる。 この爽やかさがくせ者で、口の中に入る他の食物の味に干渉してしまう。 しかもこの爽やかさは、けっこう長い時間残るので、食事の前には食べられない。 食事の味を、爽やかさが台無しにしてしまうからだ。 また飴の場合、なめていればいいものを、つい癖で噛んでしまう。 たまにそのかけらで、口の中を切ることがある。 そうなると、飴の味に血の味がミックスされて、実に味気ないものになってしまう。
その点、キャラメルは大丈夫である。 味は地味なので他の食物の味に干渉するようなことはないし、噛んでも口の中を切るようなことはない。 要は、食べる時に、銀歯さえ気をつけておけばいいのである。 手軽で、甘くて、いざという時はすぐに飲み込める。 こんな重宝なお菓子を、今までどうして敬遠していたのだろう。
ところで、今どうしようもなく食べたいキャラメルが一つある。 ぼくが小学生の頃販売していた、森永のソランキャラメルだ。 確か、メロン味だったと記憶している。 もう手に入らんのかなあ…。
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