パソコンの前に座って、もう1時間が経つ。 その間、文章を書いては消し、文章を書いては消し、その繰り返しばかりやっている。 結局テーマが定まらないままに、この文章を書いている。
いったい、日記は毎日書くものと誰が決めたんだろう。 別に誰に強要されて書いているわけではない。 もし強要している者がいるとしたら、それは自分である。 勝手に自分でそういうルールを作って、それに縛られているだけのことだ。 自分で作ったルールだから、書くことがない時や書きたくない時はルールを変更すればいいのだ。 別にルールを変更したからといって、誰も咎めないだろう。
そういえば、ぼくの周りにもたくさんのルールに縛られている人が多くいる。 前に紹介したアルバイト君は、『クリスマスにはプレゼントを贈らなければならない』というルールを自分で勝手に作っている。 そしてルールに縛られている。 彼を見ていると、人にプレゼントを贈らないと気が落ち着かないようである。 バレンタインデーの時も、「男の価値はチョコの数」とでも思っているのか、彼は『チョコレートをたくさんもらわなければならない』というルールを作っていたようだ。 そのため、パートさんにも「チョコレート下さい」とねだっていたようだ。 結局チョコレートを13個もらったらしいが、多くもらわなければならないルールに縛られた彼は、きっとその数に満足できず、ストレスを溜めたことだろう。
ぼくはだいたい一日に一箱のペースでタバコを吸っている。 別に一日一箱というルールを作っているわけではないので、一日二箱吸っても、「吸いすぎた」と思うくらいで、別にストレスが溜まるわけではない。 ところが、タバコにルールを作っている人もいる。 前の会社にいた時、毎日3箱タバコを吸うというヘビースモーカーがいた。 ある時彼は、「おれはこれから1時間に1本しかタバコを吸わんことにする」と宣言した。 彼はその言葉どおり、1時間に1本しかタバコを吸わなかったが、10分置きにイライラしていた。 自分でルールを決めて、自分に縛られ、あげくにストレスを溜める、いい見本である。 ぼくが「別に1時間1本とか決めんで、少し控えめにする程度でいいんやないね」と言うと、「いいや、おれはそう決めたんやけ」と言って、意地になってそれを続けていた。 しかし、彼は妙に時計を気にするようになり、時計を見ては「まだか」とつぶやくようになった。 そのうち、時計に向かって八つ当たりする姿も見かけるようになった。 こうなれば病気である。 その後彼は自分のバカさ加減に気がついたのか、また以前のヘビースモーカーに戻っていた。 おかげで、時計に八つ当たりする姿は見られなくなった。
同じくタバコのルールマンがいる。 その人は、「何分置きにタバコを吸う」というルールを決め、タバコを吸った時間をメモしていた。 そうすれば前に吸った時間が確認できるので、自ずとタバコを吸う本数が減ると言っていた。 これを始めた当初のこと。 本人は気づかなかっただろうが、メモを取るための紙やペンがないと、彼は不機嫌な顔をしていたものである。 その時点で、彼はルールに縛られていたのだろう。 が、確かに彼の言うとおり、タバコを吸う本数は減ったようで、試みは成功したように見える。 そのせいか、彼はいまだにこれをやっているようだ。 今は前のように紙やペンがなくても、不機嫌な顔をすることはなくなったようだ。 おそらく、ルールを通り越し習慣になったのだろう。 その根気強さには感服している。
さて、この日記だが、そろそろルールに縛られるのはやめることにしよう。 ぼくは上記の彼のように根気強くないので、到底習慣化されることはないだろうから。
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