風邪がぶり返したようだ。 最近、時々ではあるが、通勤時に近所のおばちゃんを、井筒屋まで乗せて行っている。 おばちゃんは、井筒屋でアルバイトをしている。 これまで、おばちゃんはご主人に送ってもらっていたのだが、年末にそのご主人が入院したために、足がなくなってしまい、ぼくのところに泣きついてきたというわけだ。 以前、駐車場の街灯が倒れ、ぼくの車が被害にあったことがあるのだが、その時、そのご主人が親身になっていろいろアドバイスをしてくれた。 そのため、いつか恩返しをしなくてはと思っていた。 それに、井筒屋はぼくの通勤ルートの途中にあるので、おばちゃんを乗せて行ったからといって、時間をロスすることはない。 そういう理由から、ぼくはおばちゃんのアッシー君を引き受けた。
今年に入って今日が三度目のアッシー君なのだが、前回乗せた時、おばちゃんは風邪を引いていたらしく、軽く咳をしていた。。 その時はぼくのほうが風邪がひどかったので、別にどうということはなかった。 ところが今回は、ぼくは治りかけていたのだが、おばちゃんの症状はさらにひどくなっていた。 どうも今日の風邪は、このおばちゃんからもらったものらしい。
午前中は何ということはなかった。 しかし、昼頃から鼻がむずむずして、何となく寒くなってきた。 『もしかしたら』という思いから、ぼくはすぐさま薬局に駆け込んだ。 「葛根湯下さい」 「何ね、また風邪ね」 「どうもうつされたみたいです」 「気をつけんとね。今年の風邪は熱が出るらしいけ」 そう言われて、ぼくは額に手を当ててみた。 少し熱い。 さっそく葛根湯を飲んだ。
1時間ほどたった。 薬が効いたのかどうかはわからないが、先ほどの寒気はなくなったようだ。 しかし、今度は咳き込みがひどくなった。 年末から引きずっている風邪の咳は良くなりつつあったのだが、ここに来てまたきつい思いを強いられるのか。
のどが痛いのも熱が出るのも嫌だが、咳ほど辛いものはない。 胸が痛くなるは、声はでなくなるは、おまけに咳き込んでいる途中、脳の血管が切れるんじゃないかと思うほど頭に負担がかかる。 あまりに辛いので、この間、咳を我慢しようと頑張ってみた。 最初はのどが咳を欲してくる。 そのくらいは我慢出来た。 そのうち、気管支が妙に痒くなってきた。 腹に力が入らず、力強い呼吸が出来ない。 それでも我慢していると、今度はみぞおちあたりが痙攣してきた。 それで、怖くなって止めた。 その反動からか、けっこう長い時間咳が止まらなかった。
客観的に見ると充分に風邪を引いているのだが、ぼくの主観が風邪を認めないため、おかしなことになる。 健康な時と同じ行動を取ってしまい、それがまた風邪をこじらせる原因となっている。 例えば、寒い倉庫で整理をやる、普通通りにタバコを吸う、汗をかいても拭かない、厚着をしない、などである。 年末から続く風邪、どうも長引きそうな気がする。
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