「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 今日この言葉を、仕事始めの取引先の人からさんざん聞かされた。 おかげで今日は頭を下げっぱなしだった。 普通はここで終わりである。 しかし、中にはおかしなことを聞いてくる人もいる。 「正月はどう過ごされましたか?」 <え?違うでしょうが。 店が3日から開くことぐらい、よくご存じでしょうが。 あんたは正月休みかもしれんけど、こちらはただの連休。 どういう正月を過ごせと言うんですかねえ> などと思いながらも、ぼくは笑顔で「風邪引いてねえ。正月どころじゃなかったですよ」と答えた。 「いや、4日に高校の同窓会があってですね、・・・。しんたさんも、おとといあたり同窓会とかやったんじゃないですか?」 <だから、3日から仕事やったと言ってるでしょうが!> 「やりませんよ」 「そうなんですか。ぼくなんか、まだその時の酒が抜けなくて」 「へえ」 「しんたさん、飲む方ですか?」 「飲む方ではないけど。まあ、たしなむ程度ですね」 「またまた、ご謙遜を。けっこういける口だと聞いてますよ。正月もガンガンやったんじゃないですか?」 <風邪引いてそれどころじゃなかった、と言ったでしょうが!> 「いや、そんなに飲んでないですよ。・・ゴホゴホ・・」 「えっ、風邪引いたんですか?」 「・・・」 こういう人を相手にするのは疲れる。
昨日の話。 閉店30分前に店に入ってきた女性のお客さんがいた。 テレビを見せてくれというので、ぼくが商品の説明をすることになった。 5分も説明しただろうか。 突然そのお客さんが「私、隣の家の人から嫌がらせされよるんよね」と言い出した。 「出かける時に待ち伏せされたり、風呂に入っている時に勝手に人の家の窓を開けたりするんよ」 「気味が悪いですね」 「でしょ? もう何年も続いてるのよぉ」 「警察に相談しましたか?」 「もう何回も届けた。でも、相手にしてくれんのよね」 「そうでしょうね。警察は事後処理しかしませんからね」 「最近は盗聴もされよるみたいなんよ」 「そこまでやるんですか?」 「そう、ホントしつこいんだから。ノイローゼになりそうよ」 「それは困りましたねえ」 「弁護士にも相談したし、本人に直接文句を言ったこともあるんよ」 「で、本人は何と言ったんですか?」 「『偶然ですよ』とか言うんよ。ねえ、どうしたらいいと思う?」 「探偵雇ったらどうですか?証拠写真撮って、警察に見せればいいじゃないですか」 「だって、探偵雇うとお金がかかるんでしょ? 高いって聞いてるわよ」 「でも、証拠がないと、警察も動かんでしょうが」 「うーん。でもねえ」 「何でこんなことになるんかねえ。私もう一つ家があるんやけど、そこではそういうことはないんよね」 「あのう、こういうこと言いたくないんやけど・・」 「え?」 「その家に何か因縁があるんじゃないですか?」 「ああ、そういうことも考えられるねえ。ということはお祓いしてもらわなね。ねえ、誰かいい人知らん?」 「いや、知りません」 「そう、困ったねえ」 と、そこで蛍の光が鳴り出した。 「あ、もうこんな時間。 じゃあ、お祓いする人、探しといて」 「えっ!? 心当たりもありませんよ」 「ね、探しといて。土曜日に来るから」
延々30分もつき合わされた。 以前ぼくもストーカーまがいの行為をされたことがあるので、その気持ちはよくわかる。 しかし、ぼくは人生相談の先生ではない! 今度の土曜日、休もうかなあ・・・。
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