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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■放送と通信の融合を斜めうえに考える
放送と通信の融合を斜めうえに考えてみたい。
「インターネットと放送の融合論」には、いくつかのパターンが存在する。
■テレビ側からのアプローチ
−テレビにブラウザを搭載し、番組と連携
−テレビ動画をインタラクティブにする(BML[Broadcast Markup Language]など)
■インターネット(PC)側からのアプローチ
−インターネットで動画配信(ストリーミング、ダウンロードなど)
−インターネットから放送への誘導(EPGなど)
どれにしてもあまりしっくり来ない。
テレビ側からのアプローチは、せいぜい番組に関する詳細情報を得る事、とかコマースに結びつけるとか、アンケートによる番組参加程度。
テレビの前でパソコンを開いてGoogleで検索しながら見るほうが効率的だ。
テレビのリモコンでおたおたと操作するよりもPCのほうがずっと楽に操作できるし、テレビの画面がマルチウインドウになると画面が見づらくなる。
テレビにブラウザを搭載させるよりも、テレビとは別にブラウザがあったほうが現実的には使いやすい。
よって、この領域は死屍累々であり、成功事例はない。
インターネット側からのアプローチは、ニーズとして存在するだろう。
テレビはコンテンツの宝庫である。
テレビの放送コンテンツがアーカイブされ、過去のコンテンツも含めて視聴できるようになれば、便利だと思う。
だが、現実にはうまく行っていない。
理由としては、著作権の問題が大きいとされる。
放送コンテンツには通常の著作権に加えて、著作隣接権が存在する。
CXがLDにネットで自社コンテンツを流す事を拒絶する際の最大の言い訳でもある。
でも、これは処理が面倒くさい、というだけの話であり、ちまちまと人海戦術で権利処理を行うこと、番組制作時に関係者と隣接著作権に関するきちんとした契約を交わしておけば、いずれは何とかなる問題だ。
なので、今回は斜めうえの視点。
民放のテレビ放送は、広告収入で成立しているので、本来はネットで流せるものであれば、いくらでも流したいはずだ。
広告主にとっても、ネット配信時に視聴者のドメイン等から判断して、最適な広告を挿入して流せるはずだ。
プロバイダのアクセスポイントから視聴者の居住地域も特定できる。
ある程度の属性データも組み合わせることができるはずだ。
ところが、現実には放送コンテンツはネットには流れない。
著作権処理に加えてもうひとつの理由は、インターネットによる映像コンテンツの配信はインターネットの構造上、そもそも「ブロードキャスト」には向かないからである。
インターネットのしくみ上、トラフィックはあちこちのサーバーをルーティングするので、リッチコンテンツがそのまま流れてしまうと、インターネットの全体的なパフォーマンス低下を招く。
コンテンツそのものも帯域が確保されないと、きちんと再生できない。
traceroute(tracert)を使ってコンテンツのトラフィック経路を調べてみれば、多くのサーバーを経由していることがわかる。
マトモに動画コンテンツを配信しようとしても、インターネット網は現時点ではリッチコンテンツの配信に耐えられるだけの帯域、容量を持っていない。
よって、動画配信を行うためには、インターネット網を使わず、ウォールドガーデンと呼ばれる専用網を使う事が現実的だ。
NTTが提供するフレッツ網などもその一種だ。
フレッツユーザーは、インターネット網ではなく、フレッツ網を使ってNTTが提供する動画コンテンツを視聴するようになっている。
IP電話も同じだ。
IP電話も動画配信と同じく、インターネット網を使わずに専用線網を使うことにより、帯域を保証している。
ちなみに、SkypeはP2Pなので、意味合いが異なる。
ウォールドガーデンではなく、通常のインターネット網を使って動画を配信しようとするならば、CDN(Contents Delivery Network)を使う。
CDNとは、乱暴に言ってしまえば、コンテンツを配信サーバーから直接配信するのではなく、キャッシュサーバーとして分散配置されたサーバーから配信するしくみである。
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04月20日(水)
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