ID:99799
斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
[1220800hit]
■日本の家電メーカーの生きる道A
(昨日から続く)
日本の家電メーカーはハイテク産業と化し、優れた技術力を持っているが、「技術
力」に優れているだけでは、生き残ることはできない。
技術は簡単に模倣されるからである。
技術で少々、先行したところで、参入障壁を築いたことにはならない。
家電メーカーが製造業としての地位を守るためには、インテル、マイクロソフトの地
位を目指さなければならない。
必要なのは「ブラックボックス」化されたOSであり、CPUといった基幹部品であ
る。
高度に進化したデジタル家電はコンピュータよりも複雑である。
だが、ブラックボックス化に失敗し、技術が単なるコモディティー化すれば、現在の
コンピュータメーカーと同じく、製造業としては生き残っていくことはできない。
ブラックボックス技術とは関係のない低付加価値の家電製品の組み立ては中国をはじ
めとする賃金の安い国に移行せざるを得ない。
これからは複雑な製品の組み立て製造機能も海外に流出していくだろう。
将来、製造業として日本に残る機能は、ブラックボックス化した高度な基幹部品の開
発、製品やサービスの企画機能だけである。
技術のブラックボックス化に加えて必要となる能力はサービスとしてのインテグレー
ション力である。
今後、家電はネットワーク化が進行し、家電とコンピュータの境界線はあいまいにな
る。
家電デバイスは単体として機能するのではなく、ネットワークに接続され、システム
として機能する。
システムとして機能するためにはコンピュータ業界と家電業界は融合せざるを得な
い。
更には通信事業やサービス産業とも融合していくだろう。
そこで付加価値を持つのは個々のデバイスの開発力だけではなく、システムやネット
ワーク、サービスとのインテグレーション力である。
家電メーカーはネットワークを含めたシステムとしての開発力および、サービス開発
力をつける必要がある。
だが、今の家電メーカーに複雑なシステムをインテグレートするような能力はない。
サービスを企画する力もない。
日本の家電メーカーは既に単体としてのデバイス開発力では、コンピュータメーカー
をはるかに凌駕しているが、巨大で複雑なシステムを構築する力はない。
能力がなければ、企業買収を行なうか、戦略的な提携を行なうしかない。
だがそこで、間違っても自前で能力を身につけようなどと考えてはいけない。
そのような悠長な時間はない。
きっとこれからの家電メーカーは業態の変化にもがき苦しむだろう。
コンピュータメーカーが10年以上に渡ってもがき苦しんできたサービス産業化の波
は家電メーカーにも訪れる。
ただ、日本の家電メーカーは日本のIT産業と同じような凋落の道はたどらない(・・・ことを期待したい)。
日本の家電メーカーは日本のIT産業と違い、ブラックボックス技術の「種」をいく
つも持っている。
今はただの「種」に過ぎないけれど。
日本の家電メーカーは日本の最後の砦だ。
ここが崩れたら日本はゲームとアニメのヲタク大国として、生きるしか道がない。
日本の家電メーカーにはがんばってもらいたい。
オクノ総研の提唱する日本の家電メーカーの生きる道は5つ。
■家電メーカーの生きる道
@組み立て工場はさっさと捨ててしまうこと
Aブラックボックス化された技術のR&D、知的所有権の確保を強化すること
B製品単体の企画ではなく、高度にインテグレートされたサービス企画を行なうこと
Cサービス産業への移行のために、自前主義にこだわらず、M&A、戦略的提携を行うこと
D過去の成功体験は忘れ、変化を恐れないこと
07月23日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る