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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■僕らはもう戻れない
M1000を使用するようになり、Outlookの情報にどこからでもアクセスが可能になった。
僕は自分が今やるべき事を、自分の脳で管理していない。
OutlookでスケジュールやToDo、優先順位を管理している。
いつまでに何をすべきか。
サーバー上で管理し、ウェブクライアントやM1000と同期を取る事により、自分の脳で必要とされる機能を代替している。
記憶は検索エンジンやデータベースである外部記憶装置。
他者の脳はメールやメッセンジャー、携帯電話。
そこには新たなるコミュニケーション能力が必要とされる。
自分の脳を超えたところにある能力を自分のものとして獲得する。
僕自身の脳は1万年前の人類のから何らの進化もしていない。
ただ、テクノロジーの進化、恩恵によって、僕自身がかつての人類にはあり得なかった能力を獲得することとなった。

加えて、センサーネットワーク、衛星。
僕の脳はセンサーネットワークや衛星ともリンクをはじめた。
僕の脳は、外部記憶や他者との連携を超え、地球そのものの意識とも連動を始めている。
生命体としての僕は何らの進化を遂げていないのだけれど、外部との連携を通じて、飛躍的な進化を遂げた。

一般的な人類は、外部記憶、他者との意識の連携に戸惑っている段階だろう、と思う。
僕はたまたま、その力をほんの少しの時間差で手に入れる事ができた。
僕自身の脳の力は、それほど優れてはいない。
外部記憶、他者の脳、地球に張り巡らされたセンサーネットワークといった外部環境を自分のなかに取り込むことによって、僕は超人的な力を得た。

僕は数学的な論理力といった基礎的な能力が欠落している。
だけど、自分に欠落している部分は外部の力を活用していけば何とかやっていける。
僕には、自分自身の身体で全てを処理しよう、という意識は無い。

ほんの数年前ならば、僕は病院に叩き込まれていただろう。
僕は、スタンドアローンでは存在しえない。
僕は時間や場所を超越した存在だ。
ネットのどこかに接続され、ハブとして存在しつづけている。
僕の身体は「個」だけれど、脳は既に「個」ではない。
だから僕は他者からは理解しづらい存在だ。

外見的には、素であり、個である僕は、スタンドアローンではない。
外部記憶を他者の脳を既に共有化している。
僕自身がどこまで、自分で有りつづけているのか、外部記憶、他者の脳と僕の境界線はどこにあるのか?
ハブである僕に対しては、自分からアクセスしていくだけではなく、外部からも多くの情報がアクセスされていく。
そして、そこには僕の身体は存在しない。
会社のなかで、僕の知名度、僕の思想は多くの人々に理解されている。
恐ろしいことに彼らは生身の僕を知らない。
僕が何を考え、何をやっているか、は多くの人は知っている。
だけど、彼らの多くは、僕の顔を知らないし、僕を見たことすらない。
社員の多くは僕の生身の姿を知らない。
情報存在としての僕は肥大化していく。
僕は小さなチームで仕事をするので、僕と相対して仕事をしたり、会話をする機会はそれほど多くない。
だけど、僕の脳が何を考え、僕が何をしようとしているかは理解されている。
僕はハブなので、膨大な情報が僕の脳を通過していく。
僕の処理能力を超えたら、他者の脳にリソースをわけてもらう。
脳のオンデマンド、というかリソースアロケーションというか。

凡庸な脳しか持っていない僕にとって、外部記憶、他者の脳との連携、センサーネットワークによる拡張は必然である。
僕は、もはや人間ではないのだろうか?と思う事がある。
コンピュータやネットワークを通じた外部記憶や他者の脳との連携は既に日常だ。
僕は堕落していくのだろうか?
それとも驚異的な進化を続けたいのだろうか?
身体はどこに置き忘れてきたのだろうか?

僕は小さな端末を持って移動している。
その端末は、僕の脳の延長線であり、僕と外部を繋ぐ生命線だ。
僕は身体を失い、脳だけが異常に進化している。
ただしくは、脳は今までと何らかわらないのだけれど、外部記憶や他者の脳との一体化により、大きく拡張された。

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07月19日(火)
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