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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■放送と通信の融合を斜めうえに考える
コンテンツを一カ所のセンターから流すのではなく、分散配置されたキャッシュサーバーから配信する。
センターからキャッシュサーバーへの配信は衛星等を使う。
コンテンツをエッジ、ユーザーに近いところに寄せることにより、無駄なトラフィックを軽減させる。
コンテンツ配信は、エッジに近づけば近づくほど、キャッシュサーバーの数は増えれば増えるほど効率が良くなる。

では、究極のエッジサーバーは何か?と考えてみる。
それは、ユーザーのHDDである。
究極的には、コンテンツはユーザーのHDDに蓄積されているのが最も効率的だ。
HDDのコストは恐るべき勢いで下落し、大容量化を続けている。
ローカルのHDDにコンテンツをキャッシュしていけば、インターネットのトラフィックを無駄に混雑させることはない。
混雑どころかトラフィックは発生しない。

逆説的に言えば、放送のローカルのキャッシュサーバーはHDDレコーダーである。
HDDレコーダーはあっという間に普及してしまった。
放送と通信がどうやって融合しようか、とゴチャゴチャ議論している間に、究極のエッジサーバーであるHDDレコーダーのほうが先に普及してしまった。
コンテンツ配信にインターネットを使わないただのHDDレコーダー。
僕はHDDレコーダーを使用し始めてからそろそろ3年になる。
ネット配信を待つまでもなく、自宅のHDDにはコンテンツが満載だ。
テレビの放送時間を一切気にすることなく、いつでもテレビを見ることができている。
タイムシフト視聴は日常だ。

テレビ局とネット企業がごちゃごちゃと揉めている間に、HDDレコーダーが先に普及してしまった。
既にオンデマンドなんだから今更放送コンテンツのネット配信はいらない。
音楽配信だってそうだ。
日本の音楽レーベルがごちゃごちゃと言っている間に、僕は、さっさとMP3ファイルを一万曲以上溜め込んでいる。
ネットによる音楽配信サービスが始まっても、時既に遅し、である。

コンテンツプロバイダにとっての「当面の敵」はネットではなく、HDDだ。
そして、それは既に普及してしまっている。
HDDレコーダーによりオンデマンドは実現されている。

放送のビジネスモデルは、ネットよりも先にHDDにより殺される。
HDDレコーダーによるタイムシフト視聴は、もはや避けることができない。
タイムシフト視聴が避けられないのであれば、放送局は、タイムシフト視聴をポジティブに受け止め、タイムシフト視聴を前提とした放送形態に移行せざるを得ない。
これは既に起こってしまった事であり、流れには逆らえない。
最悪の事態は、放送局が、音楽配信と同じく流れに逆らったプロテクトなり圧力をかけて自滅に向かう事だ。
流れに逆らう事は長期的には自滅行為でしかない。

タイムシフト視聴は、CM飛ばしと、テレビ放送の編成に大きな影響を及ぼす。
広告収入で成立している民放のビジネスモデルを破壊し、時間帯によるCM枠の料金体系も崩してしまう。

だが、放送局はタイムシフト視聴をポジティブに受け取らなくてはならない。
もはや避けられないのであれば、タイムシフトを前提とした事業形態に移行しなくてはならない。

放送局はゴールデンタイムの価値の相対的な価値低下は受け入れざるを得ないけれど、かつては無価値であった深夜早朝、といった時間帯を価値のある放送時間として得ることができた。
ゴールデンタイムなど一日24時間のうちのほんの数時間に過ぎない。
タイムシフト視聴により、24時間がゴールデンタイムになる可能性だってある。
午前4時、午前5時といったほとんど無価値であった時間帯をビジネスに変えることができる。
ポジティブに考えれば、放送帯域、チャンネルが数倍に増えたことと同義である。

タイムシフト視聴の普及のせいか、深夜帯にアニメ番組が増えた。
リアルタイムで深夜にアニメ番組を見ている視聴者は少数だろう。
多くの視聴者は、録画して後から見る視聴者だと推察する。
放送局もタイムシフトを前提とした放送形態を模索しているのだろう。

テレビ番組、なかでもCMの制作方法に対する考え方は、大きく変わらざるを得ない。

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04月20日(水)
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