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窓のそと(Diary by 久野那美)
by 久野那美
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■遠くへ。
遠くへ行きたいと思った。
遠くというのがどこなのか、なぜ、そこへ行きたいのかははっきりしていた。
にもかかわらず。「遠く」というその場所は、とても悲しい目的地だった。

目的地な訳だから、そこを<目指し>てどんどん<進ん>だ。
そうすると、そこは目的地な訳だから、やがてはたどり着いてしまった。
あんなにはっきりと知っていたはずの「遠く」という場所は、その瞬間、どこよりも不案内な「此処」という場所に化けてしまった。
行きたかった場所はそんな場所ではないので、仕方がないので、やりなおした。
「此処」というよそよそしい場所から、
あらためて、「遠く」を目指して出発した。
そして・・・・。

そうやって、いったいどれだけの「此処」を<出発して>きたのだろう。
気がつくと。とんでもなく長い距離を旅していた。
気が遠くなるほどたくさんの場所から出発し、
気が遠くなるほどたくさんの場所を目指して出発し・・・・・。

この旅はどこから始まったんだろう?
覚えていない。

わかっているのは、ここがいつも「その場所」ではなく、
そこから一番遠いところにある、どこよりもよそよそしい、
不案内な場所だということ。
だからいつも進んでいなければいけないのだということ。
どこからでも、何回でも<出発>し直さなければいけないのだということ。
10月30日(水)
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