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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 豊島でアートとジャムとカフェの小豆島3日目
瀬戸内の明るい陽射しが目覚まし。朝食は、バターがたっぷりしみこんだトースト。豆腐とわかめとプチトマトのサラダを柚子醤油で。朝から体がキレイになりそうな生ハーブティー。そして、いちご。

今日は、豊島(てしま)で過ごすことに。

土庄港から宇野行きフェリーに乗り、最初の港、唐櫃まで30分。さらに20分乗ると、豊島のもうひとつの港、家浦に着く。


降りると地図ぐらい配っているだろうと思ったら、立て看板の地図があるだけ。「美術館まで1キロ」と書いてあるけれど、どっちへ行けばいいのか表示がない。シャトルバスを待ち、美術館前で降りる。土地はたっぷりあるのに、美術館をだいぶ通り過ぎたところにバス停がある。

観光客に迎合していない。親切すぎない。

親切すぎるサービス過剰な観光地に、良くも悪くも慣れてしまった身には、新鮮。この島の楽しみ方は自分で開拓せよということだ。いざ、ディスカバー・テシマ!

そういえば、昨日訪ねた小豆島のカフェOhLiveも道路に看板ひとつ出ていないのに、ひっきりなしにお客さんが来ていた。求める人は自分の嗅覚で探り当て、たどり着く。


予備知識なく入った豊島美術館(設計:西沢立衛)は、いわゆる作品が並ぶ美術館ではなく、館がアートそのもので、その胎内で、作品(内藤礼)の鼓動と体温を体感するようなことになっていた。胎内と何気なく書いたけれど、子宮や命の芽吹きを連想させる空間だった。あるいは、太古、わたしたちの祖先が暮らした洞窟の中のような。

後で、作品の名が《母型》だと知った。素材は「地下水、コンクリート、石、リボン、糸、ビーズ」とある。

ゲルニカだって海を渡れるけれど、この作品は、豊島の外には連れて出せない。見たければ、豊島に来るしかない。島の自然に溶け込む半地下のオーバルな建造物も大地に埋まった恐竜の卵のよう。


併設のカフェ&ショップで食べた米粉のドーナツが美味。レモンクリームといちごジャムがのっかっている。


バスをつかまえ、家浦港へ。こちらの港のほうが圧倒的に栄えている。港前のレンタサイクル屋の前に求めていた地図やリーフレットがずらり。この近くで見られるものは何がありますか、とそばにいた地元のおじさんに聞くと、3分ほど歩いたところに食事のできるアートスペースがあると教えてくれ、ついでにトラックの荷台に乗せて、そこまで連れて行ってくれる。たまは初めてのドナドナ体験に興奮。


しましまの「イル・ヴェント」の奥にある「100歳の手ほか」(木下晋)をまず鑑賞。国内最後の瞽女として知られた小林ハルさんの手や表情の陰影を22段階の濃さの鉛筆で描き出している。たまは古い家屋に興味津々。急な階段に登ったまま動かない。すだれ状のふすまは、わたしにも珍しい。「ここは薬屋だったんだよ」と受付のおじさん。島の他の見どころも教えてもらう。


「しましまの家」「ジグザグの家」「チカチカの家」とたまが名づけた「イル・ヴェント」は民家がアートに。鑑賞料300円だけど、飲食(テイクアウト含む)の場合は鑑賞料なしで楽しめる。


見渡す限りのしましま。アートの中で食事を楽しめる、というより自分もアートの一部に。着るものによって溶け込んだり反発したりする。二階もしましまのチカチカ。


中庭も厨房もトイレの外も中も隅々まで作品。トイレという表示もなく、ドアも溶け込んでいるので見つけられない人多し。その不便が楽しい。



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05月02日(月)
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