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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ オペラシアターこんにゃく座『銀河鉄道の夜』
縁とは面白いもので、ダンナの父が三十年来のおつきあいになる劇団、オペラシアターこんにゃく座の公演で、わたしの小中学校時代の同級生、中田有ちゃんがチェロを弾いている。わたしたちが小学校一年で同じクラスになったのは、かれこれ三十年以上前だから、わたしとダンナ父がそれぞれ大阪と東京でつながっていた人同士が、つながった、ということになる。

有ちゃんとこんにゃく座のつながりをわたしが知ったのは、5年前のこと。その経緯は2005年01月10日(月) の日記 オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』に書いているが、そのときに観た『森は生きている』以来、再び有ちゃん×こんにゃく座の公演を観に行くことになった。

「今度のこんにゃく座で、雅子の友達の中田有さんがセロを弾くよ」とダンナ父に誘われ、じゃあ一緒に行きましょうとなった。宮澤賢治の研究をしていて、その縁で賢治作品を数多く手がけるこんにゃく座と親しくしているダンナ父は、「チェロ」を「セロ」と呼ぶ。

いつもはわたしが夜出かけるときには、ダンナの実家に子守を頼むのだけど、「たまも連れて行こう」とダンナ父。でも、普通お芝居は未就学児お断りですよと言うと、大丈夫だと言う。おっかなびっくり連れて行くと、案の定、始まってすぐにモゾモゾムズムズ。観客は年配の方が多く、モゾモゾがとても目立つ。さらにおしゃべりが加わり、「おちゃのむ〜」「たまちゃんのゴムどこ?」「どうしていまうたってないの?」……。なだめてしばらく静かになったと思うと、またモゾモゾ、ゴニョゴニョ。ついには「いつおわるの?」と言い出したので、退散した。

残りはロビーでモニター鑑賞したけれど、走り回るたまを追いかけるのに忙しく、途切れ途切れに。そして、小さなモニターで観て、あらためて、舞台での表現の豊かさに気づかされた。何度か行ったことのあるシアタートラムだが、三方を客席に囲まれたステージを役者さんと光が飛び回るのが新鮮だった。床に地球が投影され、どんどん引いて、太陽系の惑星や星座や天の川が現れる。
始祖鳥という漢字三文字が筆で描く動きにあわせて現れる演出は、光習字のようで目を見張った。客席のないもう一方の端に演奏者たちは出ずっぱりで陣取り、台詞に合わせてうなずいたり驚いたりもする。舞台から一段下がるのではなく同じ高さに演奏者がいて、舞台の一部となっている。有ちゃん目当てのわたしには嬉しいことで、最後まで観られなかったのが惜しまれた。

原作を読んだのは、遠い昔、それこそわたしが有ちゃんと出会った小学生の頃だったと思う。ジョバンニとカンパネルラという名前は強烈に覚えているけれど、物語はほとんど記憶から抜け落ち、今日の舞台で聞いた台詞は初めて聞いたかのようだった。人類が地球に存在する奇跡を「印刷して本をつくる」ことにたとえたくだりに、しびれる。もう一度原作を手に取らなくては。

終演後、初日乾杯に混ぜてもらう。「てっぱん」のリーフレットを配りつつわたしを関係者に紹介して回るダンナ父。今日の舞台の音楽を作曲された方の妹さんに「ヒロインの子、わたしの同級生の娘さんなのよ」と言われ、びっくり。つい最近案内をもらったところだと言う。「縁ってのは、そういうもんだよ。つながるようにできてるんだ」とダンナ父。

有ちゃんにも会えたし、チェロ弾いている姿も観られたし、たまにはちょっと早くて失敗しちゃったけど、行ってよかった。もう少し集中してくれると思ったんだけど、と残念な気持ちでいたら、お風呂上がりに「これよんで」と持って来た絵本が『注文の多い料理店』で、驚いた。

宮澤賢治の絵本を自分から「よんで」とたまが持って来たのは、初めてのこと。

今日の舞台との接点を知ってか、知らずか。モゾモゾしていても、何かしら響くものがあったのかもしれないし、それは知識を超えた宇宙的なひらめきのようなものかもしれない。

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09月03日(金)
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