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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 褌で始まり海パンで終わる昭和芸能舎「ラストコーラス」
朝ドラ「つばさ」第20週「かなしい秘密」での熱演が光る、頭も光る及川いぞうさんを目当てに昭和芸能舎公演「ラストコーラス」を見に行く。前回公演「長ぐつのロミオ」がとても良かったので、今回もぜひと思っていたのだけど、仕事の兼ね合いで無理かもしれないと諦めかけていた。そうしたら、ひょいと切れ目ができ、あわてて前回一緒に行ったアサミちゃんと山下さんに声をかけると、アサミちゃんは「行く!」と即答、山下さんは「チラシを持ち歩いてるんですけど、残念」という返事。
劇場は赤坂レッドシアター。アサミちゃんと赤坂見附で待ち合わせて、劇場近くのOstreaというオイスターバーで軽い夕食。乾杯のスパークリングワインがしみて、涙が出そうになる。ひさしぶりに一息つけた開放感。生牡蠣、牡蠣のオーブン焼き、トマトとイチジクのサラダ、パスタ……どれもおいしく、店員さんの目配りが届いていて、とても気持ちよく食事できるお店だった。
劇場入口で及川さんのマネージャーさんの柏谷さんにご挨拶。何度も案内のメールを送ってくださったおかげで、いつも頭の片隅に留めておけた。前回に続いて今回も招待していただき、恐縮。
さて、いよいよ舞台が始まると……東京の新聞社の女性記者が熊本支社異動の辞令を受けるところから物語は始まり、五木村の隠し芸大会(?)を取材する場面になると、赤ふんどし姿の男たちが「エーッサッサ」を熱演。及川さんは頭のてっぺんまで真っ赤になり、若い男衆に負けじと声を張り上げ腕を振り上げる。この熱さ、暑苦しさが昭和芸能舎!
五木村はダムに沈もうとしており、そこの合唱団も存続の危機。及川さんは合唱団の団長を務める男やもめの住職という役どころ。その家庭にも団員のそれぞれにも抱える事情があり、それが羽原大介さんの巧みな脚本によって、次第に明らかになっていく。そのたびに涙腺が揺さぶられる。
前回の「長ぐつのロミオ」にもうならされたけれど、羽原さんの脚本は暗転がほとんどなく、人物の出し入れ、情報提示のタイミング、ずらし、笑いと涙のさじ加減、すべてが絶妙。登場人物の一人一人の役割が明快で、2時間弱の物語の中で見事な化学変化を見せてくれる。
こう来るかと引っ張っておいて鮮やかに裏切ったラストも痛快で、わが涙ダムも決壊。
良かった良かったと余韻に浸っていると「次回公演予告」の素っ頓狂なナレーションに続いて海パン姿の男たちがステージへ進みでて、シンクロナイズドスイミングを披露。前回の予告は「モスクワ」というタイトルで、わたしはモスクワオリンピックで男のシンクロをやる話だと思っていたのだけど、今回は「帰ってこないウルトラマン」というタイトルで、やはりシンクロ。どうもシンクロはにぎやかしで本筋とは関係ないらしい。しかも、「モスクワ」と予告しながら「ラストコーラス」を上演したように、次回「ウルトラマン」をやるかどうかも怪しい。わかっているのは、きっと次回も海パン男で舞台を締めるだろうということ。
終演後、及川さんと柏谷さんに、いやー今回も泣かされました、羽原さんの脚本は本当にすごいですと興奮して伝えると、「紹介しましょうか?」とそばにいた羽原さんを紹介していただく。映画『パッチギ!』『フラガール』『ゲゲゲの鬼太郎』、前回公演「長ぐつのロミオ」に続き羽原大介脚本にハズレなしです、見た作品全部好きですと伝えると、「外してるのもありますよ」とひょうひょうと言う羽原さん。こんな肩の力の抜けた人があんな熱い作品をつくるのか……。握手してもらえばよかった、と駅に向かう道で思った。
今日のtwitterより(下から上に時間が流れます)
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コンクールの審査員は脚本の道連れ。知らない道を連れて行かれた先の景色が美しかったり面白かったりすると「ああこれを見せたかったんだ」となる。その感動が一票を投じさせると思います。RT @ieitsu @masakoimai 決め台詞に向かって…構成を、気持ちの流れをしっかりですよね
posted at 23:52:53
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06月08日(火)
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