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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 脚本家とプロデューサーが組めば強し!
知り合いの映画プロデューサー・戸山剛さんが開いているプロデューサーを集めた勉強会のゲストスピーカーに招かれた。脚本家の立場から日本映画の今の状況と今後のあり方について話して欲しいというので、わたし一人だと狭い話になってしまうなと思い、声をかけたのが鈴木智さん。シナリオ作家協会の忘年会の二次会で知り合い、新年会で意気投合し、そのときうかがった話が非常に刺激的だった。鈴木さんは作協主催のシナリオ倶楽部という映画上映会の委員をしていて、2月の会でわたしをゲストに『パコダテ人』をかけてもらうことになっている。そんな縁もあって、多忙なのは承知で「プロデューサーさんの勉強会に一緒に出てもらえませんか」とメールを送ると、「話したいことがたくさんあるので、是非!」と二つ返事で乗ってくれた。
戸山さんとは先日「珈琲の店 無垢」で打ち合わせしてあり、鈴木さんとはメールのやりとりから「脚本家はプロデューサーの参謀だ」というキーワードが浮かび上がっていた。
そうして迎えた本日当日。十名あまりの参加者とぐるりと輪になる形で椅子を並べて、勉強会開始。まずはわたしと鈴木さんがそれぞれ関わってきた映画の成り立ちを語ることで自己紹介。プロデューサーから声がかかったタイミングからギャラのことまで。互いにとっても初めて聞く話が多い。
わたしは前田哲監督がコンクール応募原稿に目を留めたオリジナルの『パコダテ人』でデビュー。それが縁で舞い込んだ2本目の『風の絨毯』もオリジナルだけど、イランの脚本家が全面的に書き換えているので、自分の脚本は資金集めに貢献したものの内容はスープになって溶けたと思っている。3本目の『ジェニファ 涙石の恋』は日本に留学経験のある女の子の原案をもとに作ったオリジナル脚本。前田監督が紹介してくれたプロデューサーがわたしが留学していたことを思い出し、声をかけてくれた。4本目の『子ぎつねヘレン』と5本目の『天使の卵』のプロデューサーにも前田監督が今井を売り込んでくれていた。6本目の『ぼくとママの黄色い自転車』は『子ぎつねヘレン』のプロデューサーから。4本目以降は原作ものが続くが、予算が大きくなるほどオリジナル脚本の企画は成立しにくいと感じている。
他に進行中の企画やボツになった企画も含めて、プロデューサーから声がかかるのは、関わった作品や人つながりがほとんど。現在製作中の短篇は『ジェニファ』のプロデューサーからで、ある企業が一社で製作費を出してのオリジナル脚本。広告ではなく作品として成立するなら、こういう形での映画製作にオリジナル開発のチャンスがあるのではないか……といったことを話した。
鈴木さんは「僕は企画ができる脚本家になりたい」と語り、企画を通すための努力を惜しまない人という印象を強く受けた。原作ものだと思っていたデビュー作『金融腐食列島 呪縛』は、設定は共通するもののほぼオリジナル脚本だという。現場を大事にし、現場から吸収する人でもある。「下手な台詞を書くより役者の顔を撮っていたほうが効果的」な場面が多々あることを役者から学んだのだという。
中盤からは参加者との質疑応答。脚本開発費の予算がある大手映画会社と違い、小規模の映画製作ではプロデューサーが身銭を切ることが多く、「脚本家に企画開発で声をかけたとき、ギャラはいつから発生するか」が関心事に。脚本家も「企画を売り込む身」であるから、プレゼンから仕事になった時点でギャラが発生するのでは、とわたし。でも現実は、脚本まで書いてもギャラが出ないこともよくある。鈴木さんは「中途半端にお金をもらって縛られたくない」とも考える。その言葉からは、自分の企画への誇りとそれを自分がカタチにするのだという心意気が感じられた。
日本の企画をプロットの形で海外に売り込む方法があること、インディーズ系映画の場合は合作にしたほうが成立しやすく資金回収しやすいケースがあること、フランスのように脚本開発に政府が文化事業として支援できないかと戸山さんは国に働きかけていることなど、プロデューサー側の発言から学ぶことも多かった。
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02月13日(土)
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