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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 「(ホームレス)公田耕一氏と(アメリカ)郷隼人氏」のその後
2009年04月01日(水)の日記に「(ホームレス)公田耕一氏と(アメリカ)郷隼人氏」のことを書いたところ、朝ドラ「つばさ」並みの反響があった。両歌人に興味を持って検索し、今井雅子日記にたどり着かれる方が毎日数十名単位で現れ、「気になっている人がこんなにいるのか」と二人の知り合いでもないのにうれしくなっている。
朝日歌壇目当てで月曜の朝日新聞朝刊が待ち遠しくなり、一週間の始まり(くどいけれど、「月曜日から始まる」派!)の楽しみがふえた。感情移入できる登場人物がいると、ドラマや小説が面白くなるのと同じく、「今週のあの人はどうなっているか」という期待を膨らませて、紙面を開き、名前を探す。(ホームレス)(アメリカ)のカタカナは(東京都)などの漢字の中でひと際目立つのだが、その二つがないからといって気をぬけない。「公田耕一氏、郷隼人氏あて」の歌が潜んでいたりするのだ。4月6日には、こんな歌が掲載された。
獄中から青テントから歌々は生きよと迫る癌持つ我に
(東京都)北條忠政
この歌を見ると、次回からは「(東京都)北條忠政」さんの歌も探すことになる。5月4日には、こんな歌。
郷さんはやはり薩摩の人なりし「きばいやんせ」とエール送らん
(鹿児島市)山本幸子
そうなると、郷氏が薩摩の人だとわかる歌も最近掲載されていたことになる。新聞はまとめ読みだけど、朝日歌壇だけは毎週チェックしていたつもりだが、見落としてしまっていた。ご本人ではなく他の方の歌から郷氏のことを教えてもらった。
もちろん、ご本人の歌を手がかりに人となりを想像していく楽しみは、ジグソーパズルを組み立てているうちに絵が浮かび上がって行くようでもあり、推理小説を読むような知的な興奮も味わえる。最近の(ホームレス)公田耕一さんの作品。
5月4日掲載
リサイクル文庫にひつそり黄ばみたる「清唱千首」戀の部を読む
5月25日掲載
ララ物資ならぬ支援のジー・パンのウエスト58が入りぬ
6月1日掲載
林芙美子を二千回生き華やげど「放浪記」とは淋しき言葉
6月8日掲載
辞書持たぬ歌作りゆえあやふやな語句は有隣堂で調べる
これらの歌から、「リサイクル文庫は図書館にあるものかな。前にもたしか図書館の歌があった」「ウエスト58は厳しい生活で痩せたからなのだろう。そういえば、体調を崩したような歌もあった」「森光子さんの記事は新聞で読んだのかしら。やはり朝日かな」「有隣堂でホームレスが辞書を立ち読みしていたら目立つのでは」などと想像したり思い出したりする。選者の一人、高野公彦氏によると、〈「清唱千首」は塚本邦雄の評釈書」〉とのこと。
塚本邦雄の「日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも」という歌には、短歌に疎いわたしも見覚えがある。この人の歌集も読みたくなる。ララ物資とはララ=LARA;Licensed Agencies for Relief in Asia:アジア救援公認団体が第二次世界大戦後の日本に提供した食料品、医薬品、日用品などの援助物資のことらしい。
掲載賞品である葉書を取りに来てくださいという朝日新聞からの呼びかけに、今は名乗る勇気がないと返事を寄越されたそうだが、公田氏の歌には、彼の行動範囲がうかがえるヒントがちりばめられていることが多い。探さないで欲しいと言いつつも、見つけて欲しいという複雑な気持ちもあるのかもしれない。放浪時代の「つばさ」の玉木加乃子のように。
今週は月曜が新聞休刊日で、昨日6月14日付けの日曜朝刊に朝日歌壇が載った。その中に
有り難し「きばいやんせ」と励ましの言葉届きぬ異国の独房に
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06月15日(月)
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