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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 脚本づくしの4時間!菊島隆三賞授賞式
それから何年かして、自分以上に負け越していた武監督と何か一緒にやろうとなり、「好きに書いてみろ」と言われて書いた「百円の恋」。あちこちに売り込んでも良い返事はなく、松田優作賞に応募し、受賞したことで映画化に弾みがついた。
今これだけみんなが「好き!」というホンが、どうしてそっぽを向かれていたのか。時の流れ、時代の流れで、ホンは変わらなくとも風向きが変わっていったのか。もちろん、強力に推す人たちの地道な努力の積み重ねもあったのだろう。そして、書いてすぐに実現していたら、安藤サクラの一子は見られなかったかもしれない。
タイミングも運のうち。「百円の恋」は、出るべきタイミングで世の中に打って出た。
松田優作賞の話になると、丸山さんのエンジンがかかった。話しだしたら止まらない、なおかつ面白い丸山さんが安藤さん登壇の時間を過ぎても話し続け、いつ割って入ろうかと思ったら、ちょうど丸山さんの口から「誰が一子を演じるか次第だ」みたいな発言が出たので、そこに乗っかって安藤さんを招き入れることができた。
一方的に存じ上げている安藤さん、ご本人にお会いしたのは初めてだったけれど、話す言葉も感覚的身体的で、とらえどころがないようで、この人にしかできない表現で、その意味をつかまえようと手を伸ばしたくなる不思議な魅力。どんな役にも染まれる女優の変幻自在な器を見るようだった。
脚本を大切にし、忠実に演じようとする姿がうかがえてうれしくなった。セリフを変えるかどうかではなく、脚本家が脚本に託した思いを敬意を持って受け止めてくれる、そこに感激したのだけど、「てにをはさえも変えないと聞いてうれしくなりました」と言うわたしの拙い司会では、一言一句変えないことを役者に求めているように受け止めてしまった人もいたかもしれない。「(不本意に)変えられるのは脚本が悪いとき」だという丸山さん、「私は変えられたことがない」という筒井さん(そもそも初稿でオッケーを出される方!なのでわたしとはレベルが違う)の言葉を引き出せたのはケガの功名。
「私からも質問していい?」と筒井さんが、ラストについて質問。選考会のときにも「ラストはこうじゃないと思う」と話されていた。すると「あれは2テイク目です」と安藤さん。まずはテストで脚本と違う形を演じてみた。それがあったから脚本の形のラストを演じられた、と。脚本と演じ手のせめぎ合いをうかがえて興味深かった。
脚本家は、キャラクターに持たせられるだけのものを持たせて役者に託す。それをどう受け止め、膨らませるか。脚本家と役者のそれぞれがどんなことを考えているかを聞けるトークも菊島賞ならでは。安藤さんが豊かな手の動きとともに「この不思議な関係」と称されたような記憶がある。夢中のうちに過ぎた一時間、をちょいと超過。あわてて締めて、肝心の足立さんへのお祝いの言葉で締めるのを忘れてしまった。
足立さん、おめでとうございます!
「百円の恋」で一点どころか、だいぶ返せたと思うけど、足立さんにはまだまだ点を返して欲しいし、痛快な場外ホームランをまだまだかっ飛ばしてください。
菊島隆三賞という脚本家の名前を冠した脚本賞は、まさに脚本家自身をたたえるものであると同時に脚本家全体へのエールにもなっている。そうしみじみ思えた授賞式だった。
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03月30日(月)
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