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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ 堺市立「泉ヶ丘図書館」あらため「南図書館」講演
この絵本を出版したエンブックスの「子ども編集部員」に下書きを見せたところ「お金が目立ち過ぎ」という意見が上がった。削るのは簡単だけど、一見ダメ出しに見える意見が、石ころを光らせてくれることもある。

「なんでお金が目立つと思われたのか?」と検証することによって「それはお金がじゃらじゃら出てくる絵本が少ないからでは?」「だったら、お金が目立つのは『わにのだんす』の個性では?」と思い至り、「もっと目立たせよう!」となった結果、「何のために稼ぐのか」というテーマが際立った。

そんな創作秘話を通して、「なんで?」と「そんで?」の連想ゲームで「削るのではなく彫刻」することで作品を豊かに膨らませられる、と訴えた。

うれしかったのは、堺市で昭和62年から活動を続ける人形劇団シャボン玉の皆さんが、前の晩に完成したばかりという「だんすわに」の人形を携えて駆けつけてくださったこと。

団員の丸山芳美さんは、昨年の母校・三国丘高校の同窓会講演によんでくださった方。『わにのだんす』を人形劇にしたい!と講演のときから言ってくださっていたのだけど、それがいよいよ動き出した模様。

一攫千金をもくろむ目つきが、なんともだんすわにっぽい!「目の下にオレンジ色をさしたら、ぐっと似ました」とのこと。きらきら光るシルクハットもできていた。きらきら光るせびろは、これから。完成して上演されたら、いっしょに踊りたい。

「なんで?」と「そんで?」で石ころを磨いて光らせる連想ゲームは、ネタの引き出しが命。というわけで、ネタ(石ころ)を仕入れるコツも時間をかけて話した。

ネタはどこにでも転がっていて、「頭のビデオカメラ」を構えて、アンテナを張っていれば、どんどん集まる。講演タイトルや内容の入れ替えを繰り返しても不動のレギュラーを譲らない「心と傘は開いたときが一番役に立つ」は、この日の講演でも人気を集めた。


「隣のテーブル」は何する人ぞ、「隣のレジ」は何買う人ぞ、という人間観察もネタの仕入れには打ってつけ。

前日のゆめ塾では、「それまでサッカーのコーチに敬語でしゃべっていた母親が、息子が席を立った途端、ため口に。これはただならぬ仲か!?」と妄想が膨らんだ話をした。今日の講演前に、父親とランチをしたお店でも隣のテーブルの男女の会話にそれとなく耳を傾け、二人の関係を想像していたら、その二人が席を立ったとき、男性がこちらを向いて「ひょっとして、今井雅子先生ですか?」。

まさに不意打ち!

相手は以前講演したことのある学校の先生。「先ほどからお話をうかがっていて、そうかな、と」。お互い、同じことをしていたわけで……。もちろん、講演で早速ネタにさせていただいた。ほんま、世の中、ネタだらけ。

また、「隣のレジ」にアンテナを張っていたおかげで、今朝、facebookを見ていて「レジ打ちを天職にした女性」の記事が目に留まった。

何をやっても長続きしなかった女性が、スーパーのレジ打ちも続かず、実家に帰ろうとした。だが、子どもの頃の夢がピアニストだったことを思い出し、レジのキーをピアノの鍵盤だと思って打つようになったところ、顔を上げて客の顔やまわりが見えるようになり、客との会話を楽しめるようになった。ある日、彼女のレジの前だけに行列ができた。空いている他のレジへと店長に促された客が「ほっといてちょうだい。私はこの人に会いに来てるの」。それを聞いて彼女は泣き崩れた……という話。

このレジの女性も、何をやっても続かなかった頃は、最初から光っている石を探して、どこにもないと嘆いていたのかもしれない。目の前にある石ころを地道に磨いて、ついに宝石を手に入れた。


わたしという石ころも、「書く」という好きなことを続けていたら、色んな人からの励ましや感想が「やすり」になって、磨いてくれた。作品を重ね、自信や勇気を授けられて、今日のようなきらきら光る日がある。


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04月21日(日)
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