ID:93827
脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
[786154hit]
■ 崑劇俳優・陸海栄さんの「日中楊貴妃の響演」
…といった講義を約一時間かけてうかがい、ゼロだった崑劇知識を大量に仕入れたところで、質問タイム。
Q 崑劇役者は世襲ですか?
A 家族が関係している人は半数ぐらい。私は叔父が役者で、学校で教えていた。親が役者だからといい役がもらえるわけではない。子どもの頃は頭角を現すが、大きくなると伸びない人が多い。むしろ縁のない人のほうが真ん中まで行く。身内ということで叔父の指導は厳しく、朝食前にバク転200回を命じられ、朝から吐いた。
(少し動きをやってもらって)
Q 指先の動きに特長があると感じましたが意味があるのですか。
A 指を差すと、私はそちらへ行きたい、となる。生なら一本指、武なら二本指、丑は三本指で差す。指を後ろに大きくそらさないといけない。学校ではお湯につけて指を柔らかくしていた。
Q 坂東玉三郎さんの京劇の演技、どんな印象を持たれましたか?
A 最初の頃は一歩の歩幅が大き過ぎると感じた。京劇は歌舞伎に比べて、ずっと小幅で歩く。でも、だんだん京劇の歩き方に近づいている。指の柔らかさも、もっと欲しい。だが、感情の込め方がすばらしい。これまでで一番感動させられた。
Q 崑劇を日本で見る機会はありますか。
ここで「実はもうすぐ公演があるんです」と我らが講師の佐々木先生。宣伝を遠慮する陸さんを慮って、陸さんが企画・出演する公演のチラシを披露してくれた。
「日中楊貴妃の響演」と題した公演の内容がまた興味深い。京劇、崑劇、日本舞踊で楊貴妃の物語をつなぐというもので、京劇と崑劇の違いを体感するまたとないチャンス。そこに日本舞踊まで加わり、さらに日舞の異なる流派が同じ舞台に立つことも珍しいという。まさに国の垣根も流派の垣根も越えた、響演。「共」演でも「競」演でもなく「響」演としたところに、企画プロデュースの陸さんの想いが込もっている。
来日して14年になり、日本崑劇社を立ち上げて、日本で崑劇や中国文化を広めることに力を注いでいる陸さん。今回の響演も、崑劇を通じて日本と中国が互いをより理解できたら、という思いで企画し、中国で活躍する同級生たちに来日公演を呼びかけたそう。だが、公演準備中に日中関係が不安定になり、無事幕を開けられるか危うくなった。
だけど、そんなときこそ、文化を分かち合い、文化でわかりあうことが必要だ、と踏ん張り、いよいよ公演まであと何日というところまでこぎつけた。
手弁当での公演だし、京劇崑劇日本舞踊の響演だというのにチケットも良心的なお値段。たとえ完売しても持ち出しでは……と心配になるが、多くの人に観てもらうことが、陸さんへの何よりの喜びと労いになるのだろう。
歴史を生き延びた日中の伝統文化がつなぐ楊貴妃の物語、お時間を作れる方は、ぜひ。
4/19(金)18時半
4/20(土)11時半 15時半
4/21(日)11時半 15時半
日本橋劇場(半蔵門線「水天宮前」6番出口から徒歩2分)
指定席 4,800円 自由席 3,500円
詳細はこちらへ。
とてもためになった崑劇講座、陸さんへの感謝を中国語で伝えたいと思い、フレーズを教えていただいた。
今天学到了很多崑劇的知識、非常感謝。
(今日は崑劇について多くの知識を得られました。大変ありがとうございます。)
今日はアジア友好に導かれた日だったのか、夜は日韓共同製作ドキュメンタリー映画『李藝(りげい)〜最初の朝鮮通信使〜』の完成報告試写会へ。『風の絨毯』の益田祐美子さんプロデュースという縁でお邪魔したのだけど、「国と国をつなぐのは、人と人のふれあいの積み重ね」であり、「過去からのふれあいの積み重ねがあって今がある」というメッセージを受け取った。
>>>今日の日記をTweetする
04月10日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る