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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ ニュープリントで『むかしの歌』(1939年製作)
お澪と珊次が行きがかり上拾ったお篠(山根寿子)をお澪は妹のように可愛がるが、実は彼女は生き別れた生みの母の娘で、本当の姉妹だった。それを知ったお澪はお篠を遠ざけて棚次のところに預かってもらう。その後船問屋が没落、お澪は珊次との縁談を諦め、芸者の道を選ぶ。引き止めようとする珊次の前で精一杯強がるお澪がいじらしい。

お澪と産みの母は映画の中で二度対面する。一度目は棚次に「会わせたい人がいる」と案内され、家を訪ねたとき。二度目はお澪が芸者になるために家を出て行くとき。どちらも言葉を交わさず、交わす目線だけで母娘の心の揺れが表現されるのだけど、二つの場面の緊張感を焼き付けたところに、わたしはこの作品の価値を感じた。

90席の客席はほぼ満席。上映後、観客の一人から拍手が起こり、他に応じる人がいなくて尻すぼみになってしまったが、いいもの見たという満足感が劇場内に満ち、初老の女性二人連れが「女優さんたちがほんとおきれいでしたね」と心から惚れ惚れと言いながら出口へ向かっていた。着物の似合う細面の日本美人はわたしの好みの顔ではないけれど、昔の映画にはしっくりなじむ。

『むかしの歌』は4月17日(金)17:15がラスト上映。「昭和の原風景」特集上映は5月8日(金)まで。4月18日(土)〜24日(金)の一週間は「はたらく人たち」と題して、以下の7本を上映。
『おかあさん』と『小原庄助さん』は是非観てみたい。いずれも銚子2本の「大吟醸」。

「はたらく一家」 監督:成瀬巳喜男 昭和14年 東宝東京/白黒
「秀子の車掌さん」 監督:成瀬巳喜男 昭和16年 南旺映画/白黒
「おかあさん」 監督:成瀬巳喜男 昭和27年 新東宝/白黒
「蜂の巣の子供たち」 監督:清水宏 昭和23年 蜂の巣映画部/白黒
「小原庄助さん」 監督:清水宏 昭和24年 新東宝/白黒 16mm
「花籠の歌」 監督:五所平之助 昭和12年 松竹大船/白黒
「恋化粧」 監督:本多猪四郎 昭和30年 東宝/白黒

04月16日(木)
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