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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 釘か杭か 〜 自動翻訳ソフト 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20060318
 
 さきごろ、田村忠彦くんの近作エッセイが送られてきた。
(Walking“on the edge”綱渡りの経営 〜 ライブドアの光と影)
 英国人の監修による英語原文を、みずから和訳する趣向である。
 
 彼ほどの達人になると、寝言も英語でいうのだろう。
 与太郎も、すぐに返事をしたため、読後の感想を述べることができる。
 それには、彼らがこころよく思っていないらしいソフトがあるからだ。
 
 数年前、フランス在住の友人にメールを送ったら、すっかり文字化け
して、フランス語のエラー・メッセージが返ってきたので、カナダ在住
の友人に相談したことがある。(トライアングルに詳述)
 
 このときも感じたのだが、外国語を切磋琢磨して学んだ友人たちは、
なぜか口をそろえて翻訳ソフトが使いものにならないという。
(ビル・ゲイツでさえも、かつて悲観的な予想を述べていた)。
 
 ◆
 
 だが、与太郎のような英語劣等生にとっては、驚異的な発明にみえる。
 いきなり長文を試したりすると、ちんぷんかんぷんだが、すこしづつ
区切れば、だいたいの意味が伝わってくる。
 
 とくにスピードの点では、個人教師もかなわない。
 かつて中学や高校での、悪夢のような授業を思いだすと、このような
パソコン・ソフトの方が安心して学ぶことができたように思えるのだ。
 
 さらに“OCR読取ソフト”と併用すると、余裕たっぷりに読み通す
ことができる。ときどきQ&Aサイトで、ちょっと変な日本語の質問が
紛れこんでいるのは、これを使う外国人にちがいない。
 
 そこで、田村くんのエッセイから、ひとつの問題点を発見した。
 ことわざの「出る釘は打たれる」という部分である。
 他人が出しゃばってはいけない、という意味にもとれるが……。
 
 ◆
 
“A nail sticking up is hammered down. ”(by Mr.Tamura)
“An appearing nail is hit. ”(Yahoo!)
“The jutting nail is stricken. ”(Exite)
 
 正しくは「出る杭は打たれる」ではなかったか? 
“Envy is the companion of honor.”(Yahoo!)
“A tall tree catches much wind. ”(Exite)
 
 たぶん現代の日本人は、大多数が“出る釘”だと答えるはずだ。
 そして、パチンコ台の真鍮製の金釘を思いうかべるにちがいない。
 ただし、なぜ「釘が出る」のだろうか。
 
 ほとんどの諺は江戸以前のものなので、金属製の鉄釘は存在したが、
材木に打ちつけると、すぐに錆びてしまい、やがて裂けてしまう。
 高級な木工品や木造建築には、竹釘や木釘が用いられたのである。
 
 ◆
 
 折れ曲った下手な文字を“金釘流”と呼ぶのは、かくのごとく上等で
ないことに由来する。つぎに登場した真鍮釘もまた、はじめピカピカで
錆びると色あせた。これがパチンコにぴったり似合ったのである。
 
 パチンコ店では、夜な夜な“釘師”が釘を折り曲げては、玉の通路を
調節していた。やがて釘がくたびれて、だんだんお辞儀しはじめる。
 きのうの客が、今日も勝てないように、虚々実々の攻防がつづく。
 
 たぶん、打たれつづけた釘は、お辞儀どころか、根元からグラついて、
老人の前歯のように浮き足だって「釘が出る」のだろう。
 ただし、これを叩いたところで、もとに戻るわけではない。
 
 日曜大工の経験者なら、出てきた釘を打っても、元に戻らないことは
理解できるだろう。すると、諺としては成立しないのだ。
 しからばなぜ「杭が出る」のだろうか(どこかで聞いたような……)。
 
 ◆
 
 かねがね、こういう問題では《広辞苑》に書いてあることが正しいと
断定されやすいが、つぎの解説は、とても詳しく実情を分析している。
 独特の語り口なので、できればリンク先(全文)を読むべきである。
 
── 「出る杭は打たれる」と間違えていませんか?(略)「出る杭」
「出る釘」のどちらも実在のことわざとして認める見方もあるでしょう。

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03月18日(土)
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