ID:87518
与太郎文庫
by 与太郎
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■ レコード・サロン 〜 Paper Concert 〜
 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19710708
 
19710427 レコード・サロン@ 〜 Paper Concert 〜
 
 はじめに、たった一本のチェロが登場します。バッハ(1685〜1750)
の《無伴奏チェロ組曲第3番〜前奏曲》です。いきなりドレミファの音
階を逆にうたいはじめます。簡潔でいかにも男性的な独奏は、シュタル
ケルです。
 ドレミの音階は、いったいだれが編みだしたのでしょうか。そんなこ
とはともかく、つぎに、ミュージカル《サウンド・オブ・ミュージック
〜ドレミの歌》を聴いてみます。映画ではジュリー・アンドリュース扮
する少女が、子供たちにドレミファを教えるシーンで語りから歌につな
がる、あざやかな演出が思い出されます。ここではミッチ・ミラー合唱
団が、例によってさっそうと歌いあげます。その前に、彼らの幕あき
《黄色いリボン》を聴かねばなりません。
 ドレミのあとは、ドミソ。ふたたびバッハで、ハ長調主和音のアルペ
ジオではじまるのは《平均率クラヴィーア曲集第1巻第1曲〜前奏曲》
です。チェンバロ独奏は、ラルフ・カークパトリックです。 
 この前奏曲を、そのまま伴奏にして、既製の祈祷文を歌詞に声楽曲に
仕たてあげる、という器用なことを思いついたフランス人がいます。バ
ッハの時代から約百年のちの作曲家グノー(1818〜1893)の《アヴェ・
マリア》がその成果です。高貴な音色で、チェロのプリンスといわれる
フルニエの独奏を聴いてみましょう。まさにフランスのかおりです。
 フランスでは、チェロにゆかりの作曲家、サン=サーンス(1835〜19
21)を忘れることができません。ご存知《白鳥》です。この曲を、なん
とコントラバスで弾かせようと考えついたのがユダヤ系アメリカ人、バ
ーンステイン、弾いているのがニューヨーク・フィルのカー君、20才の
録音です。ちょっと信じられないほど、すばらしい運弓ですね。
 さて、こんどはジャズ・ヴァイオリンです。
 オーネット・コールマン(1930〜)は、はじめアルト・サックスを吹
いていましたが、いちど引退ののち、ヴァイオリンとトランペットを手
に再登場した変りだね、というよりも、ジャズの厳格な作曲家として認
められるべきでしょう。舞台にあらわれた彼が、ヴァイオリンの弓に松
ヤニを塗りつける、キュッキュッという音にさそわれて、ベースが思わ
ず伴奏をつけたので、聴衆が大よろこびします。《フォーリング・スタ
ーズ》につづいては、《サイレンス》です。途中“チェロキーをやれ”
と野次が聴えます。そこで彼が、しぶしぶその一節をおり込むなど、実
況録音ならではの展開です。
 さて、サイレンス(沈黙、静止の意)といえばサイモン&ガーファン
クルのふたり、映画《卒業》の主題曲となった《サウンド・オブ・サイ
レンス》、実は映画の前に発売されたレコードと、映画のために録音さ
れたサウンド・トラック盤とふたとおりあるのですが、近年これほどさ
わやかに笑うことのできた映画もめずらしく、その点で、後者を尊重す
ることにします。
 すでに、お気づきのように、今回のコンサートはサイレンスがテーマ
です。“雄弁は銀沈黙は金”ということわざにしたがい、音楽における
沈黙の時が、いかなるものか、探ってみたいものです。ある意味では、
邦楽用語としての間(ま)に通じるかもしれません。
 そこで純邦楽をひとつ、いささか場ちがいですが広沢虎造の浪曲《清
水次郎長伝〜石松と三十石船》における息もつかせぬ間を、あらためて
聴いてみましょう。時間の都合もあり、“寿司食いねえ”というあたり
で、次のレコードに移らねばなりませんが。
 現代の日本の音楽であっても“現代邦楽”とは呼ばれていない、つま
り歌謡曲の中からいずみ・たく作曲《夜明けのスキャット》を選んでみ
ました。由紀さおりの入念な唱法が広汎なファン層を獲得したのは、い
まさらながら当然です。
 スキャットの語源は何かと、手もとの英和辞典を引いたところ、載っ
ておりません。もし、だれが発明したか、ということなれば、アームス

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07月08日(木)
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