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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 水三題 〜 水の変態 〜
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19560625
水三題
壱
大雨が降った後なので琵琶湖の水が、かなり淀んでいた。
私達の乗ろうとしている船の他にも随分沢山の船が有って、桟橋の周
辺の水は重油に抑えられてゆらゆらと動いた。十時半の朝の太陽が、そ
れを金色に照らして重油と水の作る色模様に生彩を加えていた。それが
影になった船の片面に時にチラチラと反射して、そこだけが魚の鱗の様
になった。新しくもない白ペンキの香りが鼻をついた。
弐
“やぁ、あれが沖の島か”
青がかった緑色の島に百本ばかりの松の木がこれも青緑色をして立っ
ている。其の島の右後に、くりくり太った白い雲がぽかんとこちらを眺
めている。この辺になると水は真っ青である。
参
銅貨を三枚、板の上に置いてボートの有る処へ降りて行くと、右足を
踏込んだ水草の中から蛙が五六匹驚いて逃げ出した。左足を前へ出すと
又沢山逃げ出した。ボートをつないである杭まで行くには相当な数の蛙
の出現を覚悟しなければならなかった。
ようやく杭までたどりついてボートの舳先に手をかけた。其の方に重
みが加わってタプンといって水の中へ少し沈んだ。其処に漣が出来て、
どんどん向うへ拡がって行くのが見えた。
水草の中から蛙が一匹、水の中へ飛込んだ。
── 《これから・第六号 195305・・ さゞなみ同人会》
── 《虚々日々 20001224 阿波文庫》P020
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20041216
三題噺 〜 高島春江先生講義録 〜
── 宮城 道雄《水三題 〜 山の筧・大洋の朝 〜 1923‥‥ 作曲》桜居女・詞
── 宮城 道雄《春の海 19320531 初演》ルネ・シュメー(編曲)
── 宮城 道雄《雨の念仏 1935‥‥ 三笠書房》随筆集
── 《カーネギー・ホール物語 19520125 America》Stokowski,Leopold
♀Chemet,Renee Violin 1888ca‥ France 極東 19‥‥‥ ? /航空事故
宮城 道雄 箏曲/作曲 18940407 兵庫 刈谷 19560625 62 /列車事故/自殺?
Piatigorsky,Gregor Cello 19030417 Moskva America 19760806 73 /〜《白鳥》
── 昭和31年6月25日未明、大阪の公演へ向かう途中、愛知県刈谷市
の刈谷駅付近で夜行急行列車「銀河」から転落して亡くなった。当時は
寝ぼけてトイレのドアと乗降口を間違えたなどの推測がなされたが、
現在でも事故か自殺か、真相は不明のままである。 命日の6月25日は
遺作の歌曲にちなみ、「浜木綿忌」と呼ばれている。
神戸の旧居留地に生誕地の碑が建ち、東京都新宿区に日本で最初の音
楽家の記念館「宮城道雄記念館」が建つ。── 《Wikipedia》
■ 水族館
── 盲目の作曲家、宮城道雄 (1894〜1956) の回想に、こんなエピソ
ードがあった。筝匠があるとき、楽屋で琴を奏でていると、誰かがじっ
と聴きいっている気配がする。やがて、それがチェロのピアティゴルス
キーであると察しられたが、彼は何かを探しはじめて様子である。何を
探しているのですか、とたずねれば、ここにチェロは置いていないか、
という。あなたのような大家に、弾いていただけるような楽器は、どの
みちございません、と師が恐縮するうちに、彼はどこからか、古いコン
トラバスを代りに見つけだしてきた。
そして、筝匠をうながすや、悠然と《春の海》を弾きはじめたという。
《春の海》は、もともと昭和7年に来日した女流ヴァイオリニスト、
ルネ・シュメーによって、ヴァイオリン用に編曲された尺八と筝の二重
奏曲である。
これをコントラバスで弾くには、かりに3オクターブ下げても、相当
なハイ・ポジションと、困難な運弓が要求される。いわば東西両巨匠に
よる、まことに珍らしい、かつ崇高な楽興の時が、その場に展開された
こと、と思われる。
実はこの話、何かで読んだ記憶だけが頼りで、出典を明らかにできな
いのが残念だが、宮城師には《雨の念仏》その他の随筆集もあるとかで、
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06月25日(月)
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