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与太郎文庫
by 与太郎
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■ くたばれ!たかじん(1)
ざこば そういうこともあるわな。ほんで、女優はどないしたんや。
 阿波 みんな、もうバラバラにしゃべっとる。マネージャーの彼女か
    ヨメはんまで、いつのまにか増えとる。さすがのボクも計算が
    混乱したが。それでもクダンの女優との約束がある。
ざこば さいな、男の意地や。
 阿波 明け方の町筋を、タクシーが彼女のトモダチの家の前に向う。
ざこば もうちょっとや、青年ジツギョ−カ、イケーッ。
 阿波 「そこ曲がって、そこ止めて」ハイ、それまでよ。
ざこば ええかげんにせいや、オチにもならんがな。ワシも帰るで。
 阿波 もうちょっとで終わる。数日後、タカじんがボクの席にきて、
    先夜の礼言うどころか「ボク今度ケッコンします」「そうか、
    よかったな。相手が居ったんか」「ほんなもん、いつでも居り
    ますワ」「誰でもええけど、いつや」「あさってですワ」「そ
    うか、えらい急やな」「それで結婚式やけど着ていくもんがな
    い」「エプロンであかんか」「相手はトモダチに衣装借りるん
    ですワ」「お前セビロくらいないんか」「ない、ネクタイ窮屈
    やから」「着たことあるか」「そんなもん、ありますワ」「わ
    かった、これやるわ」ボクは偶然その夜、着ておった黒のダブ
    ルをパッと脱いだ。「ちょっと着てみろ」「チイサイけど着れ
    ることは着れる」「ぜいたく言うな、袖が足らんナ。今晩ヨメ
    ハンにいうて引っ張り出してもらえ、それくらい、どんな女で
    もできるやろ」「大阪の女やさかい、何でもしよる」「他の女
    に頼むなよ、ヨメはんか、そのトモダチまでや、わかったな」
    「ネクタイ、どないしょ?」「マスターに貰え、花婿用を二本
    もっとるはずや、一本は失くしたかもしれんが」
ざこば ええとこあるがな、服やってもたか。それが前のヨメハンか。
 阿波 ボクの想像やが、先夜のドサクサにまぎれて、彼女を押し倒し
    よったんやないか。「好きやねん、ケッコンしよう」とかデマ
    カセ言うたんやろ。相手が誰か聞かなんだのは、ピンときたか
    らや。これが粋人や、俺は、タニマチでもファンでもないから
    チップはやらん。アイツの下手な歌とギターに責任を感じてる
    だけや。客に申し訳ないと思うが代わりがない。何とかゴマカ
    シながら、店の邪魔にならんことを祈る日々やった。
(つづく)
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06月06日(木)
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