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与太郎文庫
by 与太郎
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■ テープ・ヒステリー
だれが思いついたのか、ウラオモテ走行ともいうべき、往復トラックの
発明は、あきらかに録音機能をおろそかにした、再生優位の上にたって
いる。唯一の利点として、もし最後まで聴きおわった場合には、巻きも
どしの必要がない、というだけのことで、いまさらどうにもならないか
もしれないが、カセットなどは2トラック片道走行でもよかったのでは
ないか。
 カセットの進出が、さまざまの危惧をよそに、ごく短期間で成功した
のは、主として録音優位が認められたからで、ステレオとモノラルの連
帯・併走は、ごく当然であった。
 
 4トラック往復で、オート・リバースなる機構が考案されたのは補助
的なもので、一種の試行錯誤としか、思われない。
 最近出た、秒速38センチという豪華版にしても、なぜマスター・テー
プや、放送音楽に用いられるような2トラック片道ステレオにしなかっ
たか、おそらく、諸種のメーカー側の事情にあわせたものにちがいある
まい。
 
 ■ 編集する
 
 編集には、二通りの方法がある。裏面に(つまり反対方向に)、何も
録音されていなければ、どんどん切って接げばよいし、雑音とか記録的
な内容では、かなり思いきって捨てるほうが、結果的にはまとまるはず
である。音楽では切れないじゃないかという人は、たぶんレコードとか
放送の盗録(?)しかやったことのないためで、テープの機能の活用と
してはきわめて偏よった、初歩的な段階にとどまっている。
 ストコフスキーの例を引くまでもなく、プロフェショナルな録音技術
 
(図5)
 
では早くからこの問題にとりくみ、演奏家が途中でミスをしたり、気に
入らない部分があっても、その部分だけ入れかえたり、いわば時間の切
り貼りが自由自在である。有名な例では、カルーソーのオーケストラ伴
奏を、まるごと入れかえるという、いかにもアメリカ的な思いつきにも
成功している。
 アマチュア用の機器では、とても無理だという前に、どこまで可能か
工夫してみたいものだ。それには、前述の“切る・貼る・接ぐ”の技術
に熟達するとともに、重要なことは各種の失敗が多くのヒントになり得
る、という不敵な自信である。
 ここでは、ごく基本的なケースを紹介するために、音楽そのものには
ふれず、主として音楽を“活かす”ための二三の顕例をあげておく。
 放送からの録音は、しばしば解説の声に閉口することがある。“では
どうぞ”などといわれると、くり返して聴くにはいかにも耳ざわりで、
いっそ消してしまいたい。ただし、左右チャンネルのヘッドは、録音し
た時と、同じように消去できるとはかぎらず、いずれかのチャンネルが
いくぶん尾をひくことがある。それと、消去を終る時に何らかの雑音が
入るので、よけい気になっていけない。思いきって、曲の冒頭ぎりぎり
まで切断するのがよい。
 レコードとの比較で、よくいわれるように、途中の楽章のアタマが、
簡単に把えられないから、目印として接着テープを貼っておくとよい。
一方を斜めに切っておけばウラオモテの区別もできる。これだとレコー
ドのように、いつ始まるかおどおどする必要もなく、レバーを一時停止
からスタートさせ、たちどころに音の世界を開くことができる。
 この時もレバー・ショックの負担をなくすために、手をそえないまで
も、たるみのない状態にしておく。実況録音などでは、聴衆のざわめき
とか、指揮者の歩いてくる足音など意外にリアルな効果もあって、これ
はこれで残してもよい。延々と続く拍手を、実際より短かくするのも、
簡単にできる。このときの接合は、なるべく斜めに、15度くらいの角度
に切り貼ると自然に聞える。
 しかし、もしこの拍手を、さらに長く延々と続けたい(?)場合には
もう一台、同じ性能のデッキが必要である。実をいうと、高度の編集に
は、デッキは二台一組というふうに備えたいものである。
 
 ■ 写す
 
 二台のデッキを使って、テープからテープへ転写するには、出力ジャ

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01月19日(月)
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