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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 水鳥の羽音 〜 立つ鳥跡を濁さず 〜
相撲では、弟子が兄弟子や師匠に勝つことを「恩返しした」という。
引退目前の師匠に、最後の一番で「恩返し」する情景は美しい。
悲しいかな、引退する弟子に、はじめて師匠が教える一番もある。
いまにも泣きださんばかりの弟子に、緩手を放って花をもたせてやり、
故郷にもどって「恩返しできた」と云わせるのである。
プロ野球の引退試合で、最後のヒットを打たせるのも粋な配慮である。
◆ いつかきた未知
── 余人には納得できないが、その余人にも横好きの道があったりす
る(略)ゴルフや将棋やマージャンに上達しても、それによって業績が
上がることはなく、下がった場合は命とりになる。
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20071019
次官の時間 〜 ゴルフ・マージャン・焼肉 〜
プロ棋士でさえも「勝てばニコニコ、負けてガックリ」だというから、
横好きの者が嬉しがるのは当然だ。
(まてしばし、野党党首が与党長老に負けるわけにはいかない)
多忙な週末の一刻を、たっぷり楽しんだ野党党首は、翌週も招かれた。
こんどは与党党首からの密談だという、すわ何用か。
囲碁に勝たせてもらった直後なので、断わるわけにいかない。
まさか首相が「碁のカタキを将棋で討つ」ためではなかろう。
おっとり刀で馳せつけると、意外や意外、とんでもない話だった。
以下は、まったくの推測であり、うたたねの白日夢にすぎない。
フクタ「先週は、ヨサノさんをやっつけたらしいね」
オサワ「いやぁ、むかし教わったので、ようやく恩返しできました」
フクタ「キミ泣きたもうことなかれ、というわけか、フッフッフ」
オサワ「ソーリには、政権奪取ちゅうようなことを教わりたいですな」
フクタ「キミ急ぎたもうことなかれ、というわけだ」
オサワ「そうも云っておれない状況でしてね、ヘッヘッヘ」
フクタ「おたがい、それほどノンビリできないんだ。さてと……」
オサワ「………………、えっ?」
フクタ「………………、どうだい?」
オサワ「………………、まさか?」
フクタ「………………、これでどうだろ」
オサワ「………………、なるほど、ヘッヘッヘ」
フクタ「………………、どうだい?」
オサワ「………………、帰って、ミンナを説得しましょう」
フクタ「………………、それがいい、フッフッフ」
◆ 居玉と入玉
ヘボ将棋では、飛車を取られそうになると、目の色を変える。
あるいはまた、飛車が取れそうになると、いかなる犠牲も厭わない。
自陣が危うくなっても、かならず飛びつくのは、誰しも覚えがある。
おまけに桂香まで手順に取れるとあっては、あんまり話がうますぎる。
ふと我にかえって、自陣に手を入れることにした。
こういう時こそ、金銀を引きしめ、玉の守りを固めておくべきなのだ。
かくてオサワは、その場で飛車を取らず、いったん自陣にもどった。
オサワ「たいへんだ、飛車と桂馬と香車が取れそうだ」
ミンナ「オサワさん、それはダメだ。ミンナいけどりにされるよ」
オサワ「どーして? オレが敵陣に入玉すれば、浮かぶ瀬もあるだろ」
ミンナ「冗談じゃない、一将のこって万骨枯れちまうよ」
オサワ「オレの云うことが聞けないなら、ミンナ出ていけばいい!」
ミンナ「オサワさん、それはないよ。アンタだけのゲームじゃないよ」
オサワ「そんなら、オレが出ていくぞ。ミンナ、勝手にしろ!」
ミンナ「だめだ、こりゃ……」
かくてオサワは、記者会見で辞意表明した(誰か止めてくれるだろう)。
ついでに、まわりの野次馬の悪口も言ってやった。
「そばでガヤガヤ云うから、オレの作戦がダメになった。もうヤメた」
◆ スナック・安子
ミスター・オサワが、いつもの安酒場で飲んだくれていた。
ママが「ねぇ、オーさん、そろそろ払ってよ」と催促した。
「うるせぇ、せっかく機嫌よく飲んでるときに、その話はやめろ!」
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11月05日(月)
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