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Kenの日記
by Ken
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■ギリシャのヴァイオリニスト「カヴァコス」
6月1日(月)午前0時からNHKBSプレミアムで放送されたベルリンンフィルヨーロッパコンサート2015の模様を観ました。このコンサートは2015年5月1日にギリシャ・アテネのコンサートホールで行われたものです。曲目は以下の通り。

ローシーニ作曲:歌劇「セミラーミデ」から序曲
シベリウス作曲:バイオリン協奏曲ニ短調作品47
バッハ作曲:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番ハ長調(BMW1005)からラルゴ(アンコール)
シューマン作曲:交響曲第3番変ホ長調「ライン」

演奏
バイオリン:レオニダス・カヴァコス
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サイモン・ラトル
メガロン・アテネ・コンサートホール(ギリシャ)で収録

コンサート放送の前に、今回のソリストギリシャ出身の「カヴァコス」も登場する「アテネの紹介番組」が放送されました。ナレーションがドイツ語なのでドイツで放送されることを前提に作られた番組のようです。債務問題で揉めている「ドイツ」と「ギリシャ」ですが、ドイツにおいてはギリシャの状況があまり知られていないことを証明するかのような紹介番組でした。

日本でも「ギリシャ・アテネ」の紹介番組は非常に少ないと思います。古代文化遺産が豊富なことではイタリアに匹敵するギリシャですが、残念ながら観光事業では非常に遅れてしまっています。それが債務問題の原因のひとつでもあるように思えました。番組に登場する「カヴァコス」のキャラもそうなのですが、アテネの紹介内容は「暗い感じの情報」が多いのです。地中海の眩しい太陽と美しい海、美味しい食べ物といった南イタリアの名物のようなものは無く、暗いレストラン・陰鬱な伝統音楽・社会の貧しさ等が大きく紹介されます。アテネの博物館内部も放送されましたが、展示品はギリシャ芸術だと思いますが非常に地味に紹介されます。全体的に債務門相・社会の停滞の渦中にある人々の紹介内容で、行きたくなるようなアピールする工夫が足りないのです。ひょっとすると本当に魅力がなく、難しい国なのかもしれないと思ってしまいました。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲をじっくり聞きましたが少し変わった演奏だったと思います。というのもラトル・ベルリンフィルメンバーはいつもの様に熱演を展開し、シベリウスの音楽にのめり込んでいるのですが、ソリスト「カヴァコス」は冷めた演奏を淡々と進めます。もともとそういう「キャラ」なのかとも思いますが「チョンキョンファ」とまでは言いませんが感情を表に出した方が見ていて楽しいと思います。左手の動き・正確性、右手のボーイングは素晴らしいのですが、アテネ出身の「カヴァコス」がシベリウスを得意にしていること自体少し少し変わっています。3楽章最後の方こそ熱演となりましたが「カヴァコス」の雰囲気はアテネではなく「冬のフィンランド」です。最初のアテネ紹介番組の中で一瞬「マリア・カラス」の肖像が流されました。そういえばギリシャ系移民のカラスも難しい人物であったのだろうと思い至りました。

シベリウスの協奏曲に対して聴衆は熱狂的な拍手を送りました。カヴァコスは力演タイプではないのですがギリシャの聴衆の反応はすごいものでした。EUの盟主ドイツのベルリンフィルを向こうに回して対等にシベリウスを弾き切ったギリシャの音楽家への賞賛のような感じも受けました。カヴァコスはアンコールに答えて非常に地味なバッハのラルゴを弾きました。どんな感情が込められているのか全く分からないラルゴは淡々と地味な音で弾かれました。因みにこの演奏会の後にベルリンに戻ったベルリンフィルのメンバーは14日に次期指揮者選定会議を開催したのですが結論を得ることはできませんでした。
06月03日(水)
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