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Kenの日記
by Ken
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■ヤルヴィとN響の船出
5月3日の連休中の日曜日に放送されたNHK交響楽団の演奏会模様を妻が録画しておいてくれたので今日見てみました。パーヴォ・ヤルヴィのN響主席指揮者としての記念すべき第一回の演奏会でした。
NHK交響楽団第1802回 定期公演 Aプログラム(2015.2.7NHKほーるでの録画)
エルガー作曲 チェロ協奏曲 ホ短調 作品85
マーラー作曲 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ
チェロ : アリサ・ワイラースタイン
エルガー、マーラーともN響の演奏会としてはこれまで聞いたことが無いほど、真摯で謙虚で熱のこもった演奏だったと思います。NHK交響楽団とヤルヴィのコンビが非常に相性が良く、且つお互いを評価しお互いを素直に評価している関係だと思われる演奏であり気持ちの遣り取りだったと思います。
パーヴォ・ヤルヴィは世界の指揮者界で重要な位置を占めていると思います。今月のベルリンフィルのシェフ選びでは話題に上りませんでしたが、天才肌ではないけれどその人間性を感ずることが出来る演奏は新しい音楽の在りかたの一面を示していると思います。それは二つの世界大戦前後のドイツ流の音楽、それに対抗するような「ユダヤ人作曲家・演奏家の音楽、その後の冷戦下の東西対立の縮図のような音楽とは一線を画す「平和の時代の音楽」の在り方を示していると思います。「芸術のための芸術」に陥らないためには「ヒューマニズム」が大切に成っていると思います。
NHK交響楽団が求めている音楽とヤルヴィの方向性はかなり近かったのではないでしょうか。最初から極東の音楽の本場から離れた日本のオケが「ヨーロッパの本場の音楽」を目指すとしてもそれには限界があります。ヨーロッパを離れたドュトアとかロシアのアシュケナージを連れてきても、もうひとつ目指すものがはっきりしませんでした。目指す音楽・目標とするオーケストラの姿が違っていたのかもしれません。ヤルヴィの音楽は悩み続けたNHK交響楽団にひとつの方向性を与えることになったのだと思います。
この日の演奏で感心した点はまず弦楽器群の纏まった厚い「響き」でした。演奏者全員とは言いませんがかなりの人達が積極的にトップ奏者の音楽に寄り添っていくように演奏しているのだと思いました。コンサートマスターがゲストの方であったことも要因かもしれませんが、トップが指揮者の意図を的確に理解して奏法を決定し、パートの演奏者はトップに厳密に従えば、パートの音楽は統一され分厚くなります。このような弦楽器群の音でベートーヴェンはブラームスを聞いてみたいと思いました。
また管楽器群の各パートの積極性と木管・金管としてもまとまりも見事であったと思います。金管がトランペットからチューバまで非常にバランスよく統率ある響きがしているし、ホルンパートのチームワークも立派でした。金管・木管・打楽器・弦楽器群がそれぞれパートとして充実し、さらにトゥッティではお互いの音を良く聞いてバランスを取り、見事なダイナミックな音楽を奏でていたと思います。この上を目指すとすれば各管楽器トップが「スーパーソロ」のようにオケから飛び抜けるような美音を奏でることが期待されます。
05月29日(金)
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