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Kenの日記
by Ken
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■アンナ・ネトレプコの番組
12日日曜日の深夜NHKBSのプレミアムシアター放送を録画しておいた「アンナ・ザ・グレート」と2014年ザルツブルグ音楽祭の歌劇「イル・トロヴァトーレ」(半分)を見ました。NHKBSプレミアムシアターではオペラを放送するのは久し振りでした。昨年暮れもそれまで恒例だった年末オペラ放送もなかったので、2014年から就任した新しいNHK会長の方針なのかなと訝っていたところでした。この日の放送は前半の「アンナ・ネトレプコ」のドキュメンタリーとネトレプコがレオノーラを歌った「イル・トロヴァトーレ」とネトレプコ尽くしでした。
アンナ・ネトレプコは2011年暮れのスカラ座「ドンジョバンニ」のドンナ・アンナ、2012年ザルツブルグ音楽祭「ラ・ボエーム」のミミあたりを頂点に、それ以降その体形が少しづつ「スリム」になっているように見受けられました。若い頃の素晴らしいプロポーションに戻ることは無理としても、今の雰囲気なら病弱で死んでいく役でもOKです。
一方その声はふくよかな身体が豊かな響きをもたらしているのだと思いますが「深さと幅広さ」が増して、一般的なソプラノとは大分趣の違う分厚い「ソプラノ」です。その声・キャラクターからアルトの役も十分できそうな雰囲気です。ドキュメンタリーではネトレプコが小さい頃から「オペラスター」の素質を開花させていたことを紹介していました。客受けするネトレプコの舞台上でのダンスは昔から得意だったようです。番組ではネトレプコの「ポジティヴさ」「運の強さ」を強調していましたが、「ソプラノ歌手」としてのネトレプコがどのような訓練を受けどのような勉強をしてきたのかもう少し知りたかったです。
このドキュメンタリーは2014年ロシアで制作されたようです。番組の最後の方でネトレプコは2013年に離婚し、今後は長男を育てることと音楽活動に専念すると告白しています。プライベート生活の整理がついたネトレプコがレパートリーを増やし(体重は落して)、世界のオペラ劇場で更に活躍してくれることを期待したいと思います。
後半の「イル・トロヴァトーレ」は非常に斬新な演出にビックリすると同時に上手い方法だと感心しました。舞台はルネサンス期の絵画が飾られた美術館の一室となっています。絵画はボッチチェッリやラファエロの名画が飾られているのですが、その何枚かがオペラの配役に擬せられています。タイトルロールの「吟遊詩人」の姿はボッチチェッリの自画像だと思います。またレオノーラに擬制した女性肖像画は目立つ場所に掛けられています。
非常におどろおどろしい筋語りは、美術館のガイドがツアー客に説明する「絵」の説明として語られます。そして説明員・美術館の警備員に扮していた歌手が突如、ルーナ伯爵、レオノーラ、アズチェーナに早変わりしてオペラのストーリーが展開していくのです。このオペラの特色を上手く活用した演出です。「イル・トロバトーレ」の舞台は15世紀初頭のスペインだそうですが、舞台上のルネサンス絵画だけで15世紀の雰囲気を醸し出していたと思いました。舞台道具といえば「絵」と美術館鑑賞客用のソファーだけです。
ネトレプコの声の深さとアズチューナ役のマリー=ニコル・ルミューの演技力が圧倒的です。ザルツブルグ音楽祭のネトレプコ出演オペラでは「椿姫」「ラ・ボエーム」と演出が「?」で評判が良くなかったものが続いただけに「イル・トロヴァトーレ」ではセンスの良さが光ります。オペラ後半を見るのが楽しみです。
04月14日(火)
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