ID:85567
Kenの日記
by Ken
[99175hit]
■商船三井の深謀遠慮
4月19日商船三井が運航していた鉄鉱石運搬船「BAOSTEELEMOTION号」が中国浙江省で中国当局の差し押さえを受けました。その原因は商船三井の前身の会社が太平洋戦争前に中国の会社から二隻の船をチャーターし、その船が日本政府の徴用され戦禍の中で沈没してしまい、その後のドサクサもあって当該中国の船会社への補償問題が解決されていなかったのだそうです。その子孫の訴えを中国の裁判所(中国上海市高級人民法院)が認め商船三井に保証金の支払いを命じたのですが、商船三井が交渉している間に鉄鉱石運搬船が差し押さえられてしまったものです。
商船三井は「当該船舶の差し押さえが長引くとお客様にご迷惑をおかけすること、また、その結果当社の中国での事業活動に悪影響を生じかねないこと」を勘案し、約40億円の賠償金を支払うことで差し押さえ案件の解決の見込みが立ち、当該船舶の差し押さえが解除されて出港準備が整ったとの情報が提供されました。上海市高級人民法院は貨物船2隻の中国船会社等へ総額29億円の損害賠償金を支払うよう3年前に判決を言い渡したというもので、商船三井は3年前に既に会計的に損失引き当てを済ませているのだそうです。
この中国裁判所の「差し押さえ」に対して、日本政府は「国内外からの中国への投資はどんどん減る。ダメージは中国の方が大きい。やり過ぎだ」とか、「日中間の請求権の問題は1972年の日中共同声明後存在していない」等というお決まりの批判スタンスをとっていました。ところが「商船三井」の素早い対応に自分の足元をすくわれたようなものです。企業経営は政権とは違って「継続企業の原則」で成り立っていますので経営者は長い目できぎょうの存続・成長を考えるのだと思います。
商船三井にとって中国マーケット・あるいは中国との海外の貿易取引はもはや欠かせないものとなっているでしょうし、将来を考えても中国経済がアメリカを凌駕するのは時間の問題なので、現在中国と事を構えるのは得策でないことは分かりきっています。今回の対応もずいぶん前から決まっていたものだと思います。政治は「尖閣問題・靖国問題」など過去の経緯・個人の信念を全面に押し出し頑な態度を取り続けますが、「経済」はもっとしたたかなのだと思います。
1999年に香港がイギリスから中国に返還されましたが、当時の両国のリーダのサッチャー・搶ャ平はタフな交渉したのでしょうが結果的にはかなり大人であったのだと思います。100年前に香港新界の租借条約が成立しました。100年間の期限が来るとイギリスのサッチャーは香港と新界を合わせて中国に返還することに同意しました。搶ャ平は50年間は「一国二制度」を維持するという基本法に同意しました。50年・100年という長期間の間に経済情勢は変化するし、思想・制度も変わるでしょう。世代は代わりますし戦争があるかもしれません。指導者は短期的な利益に目を奪われることなく、長い目で見てより良い選択をするために話し合い・妥協しあうのだと思います。ちょうど現在米国オバマ大統領が来日中です。
04月24日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る