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Kenの日記
by Ken
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■「NTT DATA Concert of Concerts Opus 18」聴いてきました。
会場:サントリーホール
指揮イオン・マリン
管弦楽:ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ
演奏曲目
ヴェルディ作曲 オペラ「運命の力」 序曲
メンデルスゾーン作曲 交響曲第4番イ長調 「イタリア」 Op. 90
チャイコフスキー: 交響曲第4番ヘ短調 Op. 36
グリンカ作曲:ルスランとリュドミーラ序曲(アンコール)
指揮者の「イオン・マリン」はルーマニア出身でウィーン国立歌劇場はじめ世界のオペラハウスでオペラを指揮した経験があり、ベルリンフィルを始めとして有名なオケに客演しているという経歴の持ち主です。経歴からすると客演には呼ばれる機会が多い一方で、最近は「常任指揮者」としてジックリ腰を落ち着けて仕事をする機会はあまり多くないらしい。
今日の演奏会は、「在京名人寄せ集めオーケストラ」に対峙して、限られた短い練習時間内で、「それなり」に聞き応えのある一定水準以上の音楽まで持って行く「イオン・マリン」の「マネジメント能力」を示したものだと思いました。そういう意味では優れた指揮者であると思いました。オペラの経験が豊富という経歴は今日のプログラムの曲でも良い方向に作用していたと思います。全ての曲は軽快なテンポが保たれ、音楽が「もたれる」ことなく、それなりの緩急とダイナミックな強弱で演奏され、「名人オケ」の合奏力も十分引き出していていました。各曲が非常に短く感じられたことは特筆されます。
ただし、演奏がこれくらいの水準に達しているのに終演後に、満足感の余韻に浸れなかったは、演奏中に「何」かが足りないと考え続けていたためと思われます。多分それは指揮者「イオン・マリン」と在京名人寄せ集めオケの両方に共通する課題だろうと思われました。
客演演奏の得意な「イオン・マリン」は多分「管楽器の音色」「弦楽器の音の肌さわり」のような微妙な要求はしないので、演奏者の技量・合奏力を見極めて、高水準の腕自慢揃いの管・打楽器陣を上手に「乗せて」、効率よく曲全体としてまとめるやり方を採ったのだと思われます。しかし、各曲目の中で時々顔を出す「音楽の聞かせどころ」の魅力が期待を裏切るのです。それは特にソロを受け持つ「管楽器の音色・音楽の表情」の問題になります。
「イオン・マリン」は時と場所を良く弁えて、そのような演奏者の経験分野に属するような注文を出すことはしなかったのだと思われます。幾らオペラ経験がある指揮者とは言え、プライドのある寄せ集め名人オケとの短時間の練習の中で、その種の注文するのは好ましくないからです。しかも言葉にしなくとも音楽のニュアンスを伝えられるようなカリスマ性も持ち合わせていない。
オケの方も事情は難しいのです。オペラのオケピットに入って一流の歌手の伴奏を勤めるような経験はそれこそ数えるほどしかない在京のオケにおいては、「愛・別れ・裏切り・憎しみ」といった感情を表現するオペラアリアに寄り沿うような演奏はそれほど多く経験はしていないはずです。管楽器の音色は透明色でどんな「料理にも適合できるような単調なもの」となってしまいがちです。ホルンも含めて「木管」族の腕前の優秀さとその表現の限界を感じた演奏でした。
ウィーンフィルがゲルギエフとの最初の演奏会で録音した「チャイコフスキー5番交響曲」のような例はめったにないのでしょう。要求するゲルギエフもゲルギエフなら、指揮者の要求通りにどんな表現でも実現してしまう「技術とプライド」を持つウィーンフィルも凄い。そうした出会いが歴史的名演を生むのでしょう。
09月17日(火)
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