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Kenの日記
by Ken
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■トスカニーニの映像
NHKBSクラシックロイヤルシートで「トスカニーニ」の演奏が放送されました。日曜日の深夜の放送なので録画しておいて今日見て観ました。NHKのホームページの紹介は以下の通りでした。
「トスカニーニにとってワーグナーは常に特別な地位を占めており、最後に聴衆の前に姿をみせた1954年に演奏したのもすべてワーグナーだった。彼が如何にワーグナーの音楽を愛したかは、反ファシストだった彼が、ワーグナーが創設したバイロイト音楽祭を任せたいとヒトラーから依頼されたことからもわかる。この申し出を早々と断ったトスカニーニは二度とこの音楽祭に戻らなかった。この番組は、1948年から1951年の間にNBCテレビで収録されたトスカニーニによるワーグナーの演奏を集めたものである。」
歌劇「タンホイザー」序曲(1948年収録)
歌劇「ローエングリン」序奏(1948年収録)
楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死 (1951年収録)
楽劇「ワルキューレ」からワルキューレの騎行(1948年収録)
(以上ワーグナー作曲 )
諸国民の賛歌(1944年収録)
( ヴェルディ作曲 )
テノール : ジャン・ピアース
合唱 : ウェストミンスター大学合唱団
管弦楽 : NBC交響楽団
指 揮 : アルトゥーロ・トスカニーニ
正直これまでトスカニーニをしっかりとは聞いてきませんでした。ステレオ録音が無いので録音状態が良くないだろうという先入観がありました。モノラルでもピアノ・バイオリンなどの独奏・ドュオなどの室内楽だと音の広がりが苦にならないのですが、オケやオペラではどうしても録音の悪さが気になってしまいます。しかし、このトスカニーニの演奏は「トスカニーニの指揮映像」も貴重ですし、演奏自体も素晴らしいのでモノラルの音が気になりませんでした。
最初の「タンホイザー序曲」からフレーズの処理が非常に知的で現代的に聞こえます。トスカニーニが予想外に細かい指示を出しているのには驚きました。楽器間の音のバランス、クレッシェンド・ディミュニエンドのスピードを微妙に調整します。それでいて全体が「すっきり」しているのですね。トリスタンとイゾルデの「愛の死」も予想通りの素晴らしさ。情緒的に流れないギリギリのところでしっかり踏みとどまる憎らしい程の演奏です。かつての「トスカニーニ」の人気を想像することができました。第二次世界大戦前のワルター、フルトヴェングラーとトスカニーニが活躍した時代がどんなに凄い時代であったか。中でもトスカニーニは演奏の完成度・純粋度合いでは最も優れていたのではないかと想像されます。
最後にトスカニーニ編曲による「諸国民の賛歌」が演奏されています。第二次世界大戦時に連合国側の反攻によってイタリアが降伏した際に演奏されたもので、アメリカ亡命中のトスカニーニがソ連の「インターナショナル(万国の労働歌)」のアメリカ国歌を最後に加えています。指揮をするトスカニーニの表情が非常に印象的です。ムッソリーニに支配された祖国イタリアの敗戦、ヨーロッパ・イギリス・アメリカを巻き込んだ悲惨な戦いに対するトスカニーニからの真摯なメッセージを感じます。トスカニーニが如何に戦争の本質を理解していたか分かったような気がしました。
レニングラードフィルを率いたムラヴィンスキーがソ連革命期から第二次世界大戦後まで一貫して「純粋音楽」を追求してきたことをドキュメンタリーで観たことがありますが、その芸術至上主義ともいえる「純粋音楽」の背後に、非常に純粋な「ヒューマニズム」「平和への願い」が込められていることを感じました。トスカニーニの音楽の場合にも全く同じことがいえるのでしょうね。
02月16日(月)
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