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Kenの日記
by Ken
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■リパッティの本


非常に興味深い本を見つけて読みました。ルーマニアのピアニストで若くして亡くなった「ディヌ・リパッティ」に伝記です。著者は「畠山陸雄」さん。音楽・著作に関してアマチュアの方のようですが、素晴らしい作品であり、非常に意義深い仕事だと思います。本全体にリパッティに対する敬愛と愛情が溢れていてとても読み心地の良い本でした。

この本を書くきっかけとなったのは、以下のようなな偶然が重なったことのようです。念ずれば通ずるですか・・・。非常に羨ましい限りです。

○畠山さんはリパッティ最後のブザンソンリサイタルの演奏を始め、リパッティの演奏に惹かれていた。
○畠山さんはヨーロッパ遊学中にイギリスの本屋で「リパッティ」の伝記を見つけた。しかしそれはルーマニア語原本からの抄訳であった。
○その後、畠山さんは武蔵野市派遣職員としてルーマニアに滞在する機会を得て、リパッティに関する書物・リパッティの住んだ町、リパッティに関係する人々に会うことが出来た。

私はこの本を更に読み込んでいこうと思っていますが、まず注目したのが「リパッティ」と親友であった「ハスキル」に関する記述でした。ハスキルとリパッティの交友については全編通じて記載がありますが、特にハスキルとリパッティの手紙のやり取りが詳しく書かれていて非常に面白かったです。

二人の出会いはハスキル41歳、リパッティ19歳の時でした。二人の間に、少なくともハスキルには相手に対する愛情があったようです。但しハスキルの「愛情」が普通の男女の間の恋愛感情か、それとは別の天才同士のある種に惹かれあう感情なのか、はたまた母性愛なのか分かりません。またリパッティ亡き後年下のバイオリニストの「グルミョー」との関係も考え合わせてみる必要もありそうです。

この本の最後の章は1950年9月16日の「ブザンソンでの最後のリサイタル」にあてられています。このリサイタルの模様はモノラル録音で残っていますが本当に悲しくて崇高な演奏です。ショパンのワルツに関しては今後もこれ以上の演奏は不可能だと思います。畠山さんの記述を読みながら色々想像することができました。

最近1957年のザルツブルグ音楽祭の録音で、ハスキルとアンダの演奏しているモーツアルトの2台のピアノのための協奏曲(変ホ長調)を聴きました。この曲はハスキルとリパッティが仲良く弾いた曲であったそうです。アンダも悪くはないですが、もしリパッティとハスキルの演奏が残っていたらどんなに素晴らしいだろうかと想像しています。
10月15日(月)
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