ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■窓を開ければ。
とある土曜日の朝、息子・タク(9才)がおずおずと僕に頼みごとをしてきた。

「ねー、パパー、今日ね、『妖怪ウォッチ』のゲームの発売日なんだけど、買ってきてくれないかなあ」

なんでも「妖怪ウォッチ」の何作目かのゲーム発売日らしい。しかしタイミング悪く今日は子供達が休みじゃなくて学校に行かなければならない土曜日だったので、売切れにならないうちに買って来てほしい、とのことだった。

「パパは金出さないぞ」

「わかってるよ!ボクのお年玉とかお小遣いで買うよ!」

なるほど。そのへんはアッパレである。だったら買って来てやってもよい、と、タクからゲーム分のお金を徴収した。

ただ、「妖怪ウォッチ」は今、ものすごい人気である。主要キャラのジバニャンやコマさんといえば、20世紀代に大活躍した青色の猫型ロポットや、20世紀末にブレイクした黄色い電気ネズミをはるかにしのぐ大人気キャラである。カラオケに行くと

「ウォッチ!今何時?いちだいじ〜!」

などと「ようかい体操第一」を歌うちびっ子の声が聞こえない時はない、と言ってもいいほど。ていうかウチの子らは絶対2度は歌う。

なのでそのゲームとなると、ものすごい人気で売切れ続出なのではないだろうか…?と不安になった。ゲーム販売店い行ったはいいもののどこも売切れで店をハシゴしても手に入れられませんでした、とか、売っていてもものすごいボッタクリ値だったり、たけしの挑戦状とかのめちゃくちゃなクソゲーと抱き合わせ販売させらりたり、とか、かつてドラクエ購入時に味わった大人の汚さを再び味あわなければならないのだろうか…と不安になった。

しかしそれは杞憂であり、開店直後に行ったゲーム店では僕がイメージしていたような超行列とか速攻売切れみたいなことはなく、客は3人ぐらいしかおらず、妖怪ウォッチのゲームも普通に棚に並んでいた。今は店に買いに行かなくてもダウンロード版もあるらしい。

それをレジに持って行くと、隣のレジで女性店員とオバチャン客がめちゃくちゃ口論をしていた。

「今回はそうしますけど、ホントはダメなんだからもう二度と受け付けません!」

「なによ!私は説明受けてなかった!分からなかった!」

「いいですから!もう絶対にそういうこと言わないでください!」

断片的に話を聞いた限りであるが、サービスのクーポンを使える、使えないの言い争いのようであった。この女性店員、店のオーナーとかじゃなく単なるバイトっぽいのにここまでリスクを背負ってお客とガンガンバトルしてるっていうのは余程お客が理不尽なことを言いまくってるのかな…と、全く関係ないことなのに興味津々になってしまった。

「4,622円です」

それを横目に僕は隣のレジで男性店員にお金を払う。6千円お釣りをもらうために10,622円を出したら

「8千円のお返しです」

「うおおおい!」

ここの店員たち、色んな意味でデンジャラス。

そんなわけで無事ゲットしたソフトを、昼過ぎに息を切らして帰って来たタクに渡すと

「やったあああ!ありがとおおおお!」

1万円やってもここまでよろこばないだろうってぐらいにテンションが高まり、さっそくゲームを開始した。

「あのねえ、ボクのクラスの男子、全員コレ買うみたいだよ」

「へえ、そんなに」

「マコトってのがいるんだけどね、知ってる?」

「いや、知らんけど」

「そいつね、カワイイ女の子妖怪の百鬼姫しか仲間にしないんだよ!変態だ!」

妖怪ウオッチのゲームでは、妖怪を仲間にし、パーティーを組んで敵と戦うことが出来る。そのマコト君というのは百鬼姫(ひゃっきひめ)というカワイイ女の子妖怪がお気に入りらしい。しかも

「百鬼姫だけ真っ先にレベル99にするんだよ!変態だ!」

だそうで、マコト君とやらは4年生ながらなかなか女キャラ好きな少年であるらしい。だからといって変態呼ばわりするのは酷だとは思う。タクもちょっと大人ぶりたくて「変態」と言いたいだけじゃないのか。


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07月17日(金)
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