ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■沖縄日記。そのに。
沖縄二日目の朝、僕らは釣りに出かけた。
息子・タク(8才)がどうしても沖縄で釣りをしたいと言うのだ。勿論娘・R(10才)ともども釣りは未経験であるし、僕も嫁も川釣りしかやったことがない。なので船も出してくれて釣竿もエサも全部用意してくれるところを探して申し込んでおいたのだ。
朝、小さな漁港に着くと僕ら家族の他に3グループほどの参加者がいた。時間になると船長がやって来ていろいろ説明してくれた後、船に乗り込んだ。
「…上田だよね」
「…陽に焼けた上田」
船長がくりいむしちゅーの上田によく似ていたので嫁とヒソヒソ話す。

船はトトトトト…と進み、上田氏ともうひとりのスタッフがポイントを見定め、陸からそう遠くないところでアンカーを降ろし、船を固定した。小さな湾の真ん中だ。右側にはひょろっとした細い半島が、左側には断崖絶壁があり、それぞれが海から突き出ていて湾を形成している。絶壁は上まで行けるのだろうか?眺めがよさそうだ。
上田氏から竿とエサを借り、エサのつけ方や竿の操作方法などを教わってからレッツ釣りスタート。タクに付き合わされたことであるが、オラなんだかワクワクしてきたぞ。
しかし結構悲観主義者の僕は、釣れなくてボウズだったらどうしよう、と、そんなことばかり考えてしまう。特に最悪なのは言い出しっぺのタクが全く釣れなかった場合である。無駄に負けず嫌いなタクは、もし釣れなかった場合、手の付けられないくらい泣いたりヘソを曲げてしまうはずである。これまでもポケモンカードバトルに負けたとか、ボウリングで負けたとか、数え切れないほどタクの涙を見させられた。
そういう態度って、相手に対して非常に失礼に映るのだけれども、三つ子の魂なんとやらで、もう8才だしなかなか直らない。願わくば僕は全然ボウズでもいいからタクに当たりが来ますように…と願いながら釣糸を垂れていた。
はじめ、僕ら一家4人は並んで釣糸を垂れていたのだけれども、近過ぎて糸が絡まる恐れがあったため、僕とタクが船の反対側に移動した。
タクは僕の隣で一生懸命エサを仕掛けて海に糸を降ろす。真剣そのものだ。そのひたむきさを酌んで、タクに大きな魚をプレゼントしてくれまいか、海の神様よ…と念じていたら釣れた。いや、タクじゃなくて僕が。赤みがかった魚だった。
「これは、オジサンですね」
と上田氏。
「オジサン?そういう名前?あらやだオジサンがオジサン釣っちゃったよ」
僕は釣れた興奮でそんなことを捲し立てたが、上田氏はこのようなダジャレ、何百回も聞いてるんだろうなあ…。
「食べられるんですか?」
と聞いたら、おいしいですよ、とのこと。オジサンはおいしいらしい。どうですかそこのお嬢さん。貴女もオジサン(ていうか僕)を食べてみませんか。

それからRが順調に釣れ出した。ガツガツしているタクに比べ、軽い船酔いでボーっとしているRであったが、無欲の勝利なのかもしれない。そして僕も2匹目ゲット。ベラという魚らしい。妖怪人間か。

そうなってくるとタクがだんだん恨めしそうな表情になってきた。ヤバい。想定していた事態になりかねないぞ…ということで、僕はとりあえず自分の釣竿よりタクのエサ取り付けを手伝ったりして出来るだけ時間のロスをなくしチャンスを広げてやることにした。
程なくしてようやくタクに当たりが来て、一生懸命糸をぐるぐる巻いて一匹ゲット。
「やった!よかったな!」
みんなで褒めたのだけれども、
「でもまだパパにもRちゃんにも負けてるし…」
ホントに負けず嫌いだ。
「いや、何匹釣れたから勝ちとかじゃなくてさ、もっとこう、魚との駆け引き、バトルを楽しもうぜ」
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07月31日(木)
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