ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■息子の心の友よ。
日曜日、息子・タク(8才)が
「学校でサトシが言ってたんだけど、日曜日にジム行くんだって。ボクも行きたい」
とおねだりしてきた。サトシというのはタクのポケモンカード友達で大の仲良しである。土日は必ずと言っていいほどどちらかの家で遊んでいる仲だ。そしてジムというのはスポーツジムとかそういうマッチョなものではなく、タクの場合はポケモンカードバトルのイベントをやっているカードショップ、またはバトルイベントそのものを指す。
要はポケモンカードのバトルをやりたいから連れてけ、ということである。バトルイベント自体は何度も連れてってやったことがあるが、サトシくんとは一緒になったことがないので、今日こそは一緒のところに行きたいという。しかし
「サトシくんはどこの店に行くって言ってたんだ?」
と聞いてみると
「さあ」
「聞いてないんかいー!」
肝心のことを聞いていない。
「パパ、パソコンで調べてようー」
パソコンで何でも分かると思ってやがる…。しかしインターネッツとはよくできたもので、ポケモンカード公式サイトから、今日どの店でカードバトルをやっているのかを検索できてしまうんである。ただ、いくつもヒットしてくるので、どの店にサトシ君が行っているかは分からない。
「…とりあえずココにしてみる?」
とりあえず一番近くて一番開始時間が早いカードショップに目星をつけて行くことにした。近いとはいえ聞いたこともない店だ。
「サトシのママ、そんなマニアックな店知ってるかねえ?」
と嫁が言う。サトシ君はいつもママに連れて行ってもらっている。ちっちゃい弟がいるのでベビーカーを転がしながら大変なのだ。
「それなんだよなー。タク、だからいなくてもがっかりするなよ」
と言い聞かせて出掛けた。着いてみると以前行ったことがある秋葉原や東長崎などのゴチャゴチャ狭苦しい店よりは広くてキレイな感じである。
きょろきょろと見回していると
「たっくん!」
「サトシ!」
なんとサトシ君がいた。
「たっくんも来たんだ!」
「サトシを追ってきたんだよ」
タク、サトシ、感動の再会で抱き合う。エンダー。その一方で思いっきり白けている僕とサトシママ。
「どうせふたりで遊ぶならウチで遊んでも変わらないのに」
「ですよねー」
実際のバトルは知らないレベルの高い人達(もちろん大人も含む)とやるので変わらないことはないのだが。
とにかくカードバトルが始まってしまえば僕は用無しである。タクの目にはカードと対戦相手しか映っていない。子供ポケモン親ノケモン。僕は店を出て腹減ったので飯を食うことにした。
昼時なので本当はカードバトルの前にタクと食べたかったのだけれども、バトル前でアドレナリンが出まくっているせいか、お腹減ってないと言われてしまったのだ。
外に出て飯が食える店を探したのだが、さびれた街なので定食屋みたいな店がなかなか見つからない。しかし定食屋もないくせに何故かジャズバーがあって、そこがランチタイムで開いていたので入ることにした。
扉を開けてみると格調が高そうなピアノやら装飾やら…。そしてマスターもママも音楽家なんだろうなって感じの上品そうな人で結構ビビる。
お客は僕の他にひとりだけ。しかもその人も常連さんで歌手か何かの演奏をする人らしく、ご飯を食べながらバーの人と今度ここでやるらしいライブの打ち合わせをしていた。なんだかとってもアウェイな感じであったが出されたカレーとコーヒーは美味かった。
で、カードショップに戻ってみてもやっぱりこっちもアウェイで、カードバトルイベントが終わるまでやることなし。
2時間ぐらいかかってようやく終わり、
「まけたー。サトシにもまけたー」
とぼやきつつタクが戻って来た。3人と対戦して全敗したらしい。
「はいはいお疲れ」
「秋葉原で会った人がいたよ!いろいろ教えてくれた!」
「そうか、よかったな。負けても泣かないようになったじゃないか」
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07月09日(水)
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