ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■あかりをつけましょ、しょんぼりに。
ひな祭りの日の晩ご飯は、嫁が気合いを入れて作っていた。

イクラ、海老、さくらでんぶ、などで赤・ピンク系統の色合いになったちらし寿司、蛤と手まり麩のお吸い物、刺身、春限定のいちごモンブランケーキなど。食卓が春の花のようだ。

「よくできた!写真!食べる前に写真!」

嫁はごちそうの出来映えの良さにテンションが高まり、自分で自分を褒めていたケータイのカメラを構えながら

「ほら、R、ミュージックスタート!」

さらにテンションを高めたいのか、娘・R(10才)に雛壇にあるオルゴールを持って来させ、「雛祭り」のメロディが流れた。とっとと撮れよ。

で、嫁が満足のいく写真を撮り終わってからようやく僕らは「おあずけ」から解き離れたので、ものすごい勢いでいただきまんもす。

特に息子・タク(8才)などは、ココ最近ずっと「刺身食べたい」と呪いのように執拗に言っていたので大喜びでマグロサーモンを食べていた。

「コレ何?」

「それはトロだね」

「おいしい!」

ああ、また高い食い物に目覚めさせてしまった…。

「ねえ、甘酒もあるけど飲む?」

と嫁。料理に気合いを入れているだけあって、おもてなしも手厚いようだ。いやあん、旦那酔わせてどうするつもり?なんつって。

「じゃあくれ」

と言うと、ほらよ、と嫁が持って来たのは森永の缶の甘酒で、ゴンとテーブルに無造作に置かれた。冷たいまま飲めってか。大事なところでおもてなしが片手落ち感。

暖めて欲しいところであるが、いつも仕事から帰って来てご飯を食べようと思い、既に嫁が作ってくれている晩ご飯を暖めてくれ、とお願いすると、暖めるぐらい自分でやってよ、と常に言われているので、今日もそう返されるに決まってるだろうと思い、席を立ってレンジで温めようとすると、

「あーいーから、やるから!」

なんと嫁が僕から缶甘酒を取り上げて暖めてくれるではないか。

「それぐらい自分でやれ、って絶対言うと思ったのに」

と僕が言うと

「今日のごちそうは完璧に作りたかったから、そこまで自分でやりたかったの。いつものどーでもいい晩ご飯は、その通り、自分でやってよ」

自分で自分が毎日作る晩ご飯をどーでもいいとか言っちゃいますか。

やってくれって言うと怒られるし、やるからって言っても怒られるし、嫁のダブルスタンダードは難しい。結局嫁のさじ加減なんである。

やらせてって言っても怒られるし…。

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03月06日(木)
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