ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■近所の宇宙人。
「宇宙人見たよ!」

と娘・R(9才)が突拍子もないことを言う。Rの頭の中は常にお花畑のメルヘン世界だと思っていたが、SF要素も加わってきたのだろうか。

「何かの見間違いじゃないの?」

と笑っていると

「違うもん!学校から帰る途中にみんなで見たんだもん!」

目撃者は多数いるらしい。

「パパ聞いてよ!」

Rはその時のことを一生懸命説明を始めた。それによると、Rは数人のクラスメイトと一緒に学校からの帰り道を歩いていた。ただの住宅街の道なので人通りはあまりなく、周りにはR達しかいなかったらしい。

そこに反対側からその「宇宙人」が歩いて来た。何故宇宙人だと思ったかというと、その人は全身が銀色だったからである。顔も髪の毛も帽子も服も靴もメガネも全部銀色。子供達はよく言えば度胸がある、悪く言えば無防備…になるのだろうか、逃げるどころか大喜びで食らい付いて、

「すいません!あなた宇宙人ですか!」

などと質問したのだという。すると「宇宙人」は決して声を出すことはなかったが、ニヤリと笑って手をゆらゆらと揺らし、体も左右にクネクネ揺らしながらおどけて歩き始めた。そして「じゃあね」といった感じで手をヒラヒラと手を振って、曲がり角を曲がって子供達の視界から消えていったのだという。

なんとも不思議な話である。まさか本当に宇宙人だとは思わないが、変わった人が近所に住んでいるんだなあ、と。

その話を聞いた後、子供達の集団幻覚とかではないことを祈りつつインターネッツで検索してみたら、それっぽいツイッターのつぶやきやブログの記事が引っ掛かった。やはりR達と同様に目撃して驚いた人が撮ってブログやツイッターにアップしており、画像や動画もある。

銀色
どーん。

銀色
本当に銀一色。

「君が見たのはこの人かい?」

翌日、これらの画像をRに見せたら

「この人だああ!」

ビンゴだった様子。このお方はどうやら池袋や新宿・渋谷などの繁華街でパフォーマンスをしている大道芸人さんらしい、ということまで分かった。便利な世の中になったなあ。Rの幻覚でもないことも分かりほっとした。

しかし…Rの頭の中が心配になって速攻で調べて教えてしまったが、敢えて教えない方が子供達にとっては不思議な体験として記憶に残ったのかなあ…と。大人になっても「あれはなんだったんだろう?」と謎のまま、

「通学路で遭遇した全身銀色の宇宙人」

とか都市伝説化したりする可能性もあったかも…と思いちょっと後悔した。

ただこの芸人さん、この近所に住んでいるのだろうか。全身を銀色にする仕込みが出来る場所なんてそうはないから、やはり家から銀色の恰好で池袋などに出掛けているものと思われる。だとしたら登下校の時間帯の通学路付近は避けた方がいいのではないか。もし他の子供が遭遇して、僕じゃない親がその話を聞いたりしたら

「なにー!そんな怪しいヤツがうろついてるなんて!通報だ!」

ということで警察や区に通報され、警察のパトロール強化、「全身銀色の不審者に気をつけてください」という防犯メールの発信等、ものものしい警戒態勢が敷かれてしまうかもしれないのだ。


実際お巡りさんに注意を受けている動画もあったし…。そりゃお巡りさんも立場上、むしろスルーする方が難しいよなあ…などと余計な心配をしてしまう僕であった。

正直なところ、僕もお目にかかってみたい。贅沢を言えば、Rのように予備知識無しで、更に路上ミュージシャンやパフォーマーなどがたくさんいる繁華街ではなく、近所の人気のない住宅街の道端で唐突に出会いたい。

この銀色の芸人さん、家族と一緒に住んでいるのだろうか。もしそうだとしたら、家族全員で銀色になって欲しい。

すなわちシルバーニアファミリーである。なんちて。

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11月22日(木)
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