ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■オイニープンプン。
「ただいま〜」

夜、仕事から帰って来ると娘・R(9才)と息子・タク(7才)が走って来て

「待て!まだ入るな!」

靴を脱いで中に入ろうとする僕を全力で止める。

「においをかげ!」

とRが叫ぶとタクが僕に密着して鼻をふんふん鳴らして匂いを嗅ぎまくるではないか。

「パパの匂いだ!入っていいよ!」

警察犬かお前は。ということでやっと家の中に入ることを許された僕。

「つか、なんでいちいち匂いのチェックを受けなきゃならんのだ!」

と聞いてみると

「ニセモノがパパそっくりに化けたとしても匂いで分かるんだよ!」

というようなことを熱く語るふたり。またなんかそういう物語でも読んだのだろうか…。

「ははは、パパのニセモノなんかいないよ」

どうせ誰かになりすますのならうだつのあがらないオッサンである僕より、愛人をたくさん抱えた金持ちの亭主とかになった方がいいに決まっている。

しかし子供達が僕の匂いをはっきり分かるってことは…やっぱ加齢臭なんだろうなあ…。自分も嗅いでみたい気持ちと絶対イヤだと思う気持ちが半分半分な心境である。Rとタクはますます調子づいて

「他にもいろんな匂いが分かるよ〜」

と得意気に言う。

「ママでしょ、おばあちゃんでしょ、おじいちゃんでしょ、○○ちゃんでしょ…」

「お前ら、友達にも鼻当ててふんふんしてるんじゃないだろうな…」

「ちがうよ!あと○○ちゃんのお家と××ちゃんのお家の匂いもわかる!」

「あー、よそのお家の匂いってそれぞれあるよね…部屋毎にも違ったりしてさ…」

よその家の匂いは独特である。僕もRやタクぐらいの時は友達同士でそれぞれの家を行き来していたので、それぞれの家の匂いを覚えていた。そこは共感するところあったので、いつの間にか子供達と「家の匂いソムリエ」になったように話し込んでしまった。

家の匂いだけに、スメル(住める)、なんちて。

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11月01日(木)
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